松井裕樹が絶不調のなかで見つけたもの。先発転向の伏線は2年前 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Taguchi Genki

 この年のシーズンオフ、松井は極端に言えば、そのためだけに時間を費やした。その結果が、昨年残した自己最多の68試合登板と38セーブというキャリアハイの成績だった。

「満を持して」ではないかもしれないが、それでも先発に挑戦できるだけの準備を整えていた。投球フォームを従来のセットポジションからノーワインドアップへと変更したのもそのひとつだ。

 キャンプでは初日から2日連続でブルペンに入り、右足の上げ方などを変えながら1球1球、たしかめるように投げる松井の姿があった。

「ブルペン見て、どうでした?」

 嬉々として尋ねる松井に、「低めに強いボールがいっていたと思う」と率直な感想を返すと、「ふーん」と不敵な笑みを浮かべながら、こう答えた。

「まあ、まだ始まったばかりですしね。1球1球、いいボールと悪いボールをしっかり確認しながらやっていきますよ」

 その表情は自信に満ちているとも受け取れるし、高揚感に溢れているようにも見えた。絶対的守護神からローテーションの軸へ。松井裕樹の挑戦がいよいよ始まろうとしている。

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