2020.02.02

「野球やめるしかないな」。王貞治は
スランプの柳田真宏に冷たく言った

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


「聴いたことありますよ。きっかけはね、宮崎キャンプに矢野さんご本人が来られたんです。広報の方に『お前のファンだっていう歌い手さんが来てるぞ』って言われて、変わった歌い手さんもいるもんだな、と思って。それで話をしたときに、『柳田さんって、10日間ぐらい煮込んだスープみたいな人なんですね』って言われたんです。

 いきなりナンだ? と思って、僕、『それ、褒め言葉ですか?』って聞いたんですよ。そしたら『そうです。スープって煮込めば煮込むほど味が出ますから』って。『ああ、そうなんだ』と答えたら、『柳田さんの歌、作りたい』って言われたんですね」

 こんなふうにして誕生した野球応援歌、ほかにあるだろうか。そして、その「味」とは、柳田さんのピンチヒッター人生を象徴しているように思えた。気がつけば、柳田さんは小首をかしげ、やや背中を丸め、『行け柳田』を口ずさんでいた。77年の巨人、ベストメンバーが1番から歌われていく歌詞。5番は当然「柳田」だ。

「今思い出すと、なつかしいですよね。あのときのオーダーが歌に出てくるから──。ほかに、まだ、何かありますか?」

 聞きそびれていた。亀井は〈新・最強の五番打者〉になれるだろうか。

「去年は去年で忘れて、去年の成績がよかったから驕るんじゃなくて、自信じゃなくて確信。より一層、確信の持てる努力をすれば、もう本物の5番になれると思うし、僕としては、亀井君に5番を打ってほしいです」

(2010年1月7日・取材) ◆連載第8回を読む>>

取材当時の柳田さん。引退後は歌手としても活躍した

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