2020.01.28

広澤克実が誇るロス五輪の金メダル
「アマチュア史上最高の試合をした」

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News

 アメリカは準決勝で韓国を倒しました。野手だとマーク・マグワイアもウィル・クラークもシェーン・マックもいましたけど、ピッチャーにはジョン・フーバーというスーパーエースがいたんです。彼はメジャーでは活躍できませんでしたけど、当時は151キロのストレートと、ものすごく曲がるカーブを投げていました。僕らにしてみれば練習のしようがないくらい、フーバー独特の軌道で落ちてくるタテのカーブでした。

今でもよく「プロ野球で対戦したなかで一番すごかったピッチャーは誰ですか」って聞かれるんですけど、その時、僕は「ストレートは藤川球児、スライダーは伊藤智仁、フォークは佐々木主浩、カットボールは川上憲伸、チェンジアップはグライシンガー」って答えるんです。で、カーブはマット・キーオだと言うんですけど、いやいや、じつはフーバーのカーブはキーオよりも曲がったんですよ。原(辰徳)さんも、キーオのカーブが来ると必ず屈伸しちゃうんです。頭に向かってきてそこからヒザの下まで曲がり落ちるんですから......そんなキーオのカーブよりすごかったら、そりゃ、右バッターはアウトステップしちゃうし、屈伸もしちゃいますよね。

 決勝前のドジャースタジアムの雰囲気は独特でした。僕らがグラウンドへ出て行ったら大ブーイング、アメリカチームが出てきたら拍手喝采、大歓声です。僕は浮き足立っていたというか、緊張しすぎて体がすごく軽くなっていました。あんな経験は初めてでしたね。フワフワして、アップしてもハアハア言う感じにならないし、どうしちゃったんだろうって。

アメリカチームのほうを見ると、ファンなのか家族なのか、スタンドが近いので、観客と楽しそうにしゃっべったり、選手同士でふざけ合ったりしているんです。こっちは緊張して、みんな無口だし、あんなふうにリラックスできたらいいな、なんて思っていたら、監督が僕らを集めて、こう言いました。

「あれを見ろ。お前ら、あんなことしていたら今日の試合には勝てないよ。お前らは緊張しなさい。必ず、緊張したなかから力が出るから......緊張はお前らの敵じゃないんだぞ」