ロッテ種市篤暉が「欠点を見抜かれた」
場所。悩み続け光が見えた5日間

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 この数字も立派だが、目を引いたのが奪三振率だ。116回2/3を投げて奪三振は135。奪三振率は10.41をマークした。"師匠"である千賀の11.33には及ばなかったが、100イニング以上投げたパ・リーグの投手で「10」以上を記録したのは、このふたりだけだった。

 またフォークで奪った空振りに限れば、種市が千賀や山本由伸(オリックス)を上回る数値を叩き出したという。

「もともとフォークは全然落ちなくて、武器になる球種ではありませんでした」

 しかし、昨シーズンの種市のそれは、まさに"お化け級"の落ち方をしていた。以前、千賀にフォークについて聞くと、こんな答えが返ってきた。

「極端に言えば、左肩をキャッチャー方向に向けたまま、体を開かせずに腕を振れば勝手に落ちるんです」

 もちろん、そのような投げ方は不可能に近いのだが、要するに体の開きを抑えることがいかに重要なのかがわかる。つまり種市は、千賀から指摘された欠点を克服し、昨年の成績へとつなげたのだ。

 迎えた今年1月、千賀が今回の合宿に参加しないかもしれないという状況だったが、それでも種市は「千賀さんがいなくても参加したい」と話していた。鴻江氏の理論に全幅の信頼を寄せていると同時に、不安もあった。

「自分の思い描いているイメージと実際の体の使い方が合っていない。まだまだやるべきことがある。だから、またあの場所に戻らないといけないんです」

 昨年同様、動作解析を行なうために8台のカメラに囲まれながら、種市はピッチングを始めた。ストレートが捕手のミットを叩く。一見すれば、強いボールを投げているように見えるが、何か物足りない。捕手からも「ナイスボール」の声が出ない。種市自身も自覚しているように、苦い表情を浮かべる。

 明らかに無駄な力が入っていた。力むと速い球はいくのだが、そこに強さはない。"あし体"の投手は腕を振るのではなく、振られる感覚が理想だ。その投げ方ができないということは、つまりフォームが崩れているのだ。

 なぜ、力いっぱい投げてしまうのかと種市に聞くと、「自分でもわかりません」と表情を落とした。

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