ロッテ種市篤暉が「欠点を見抜かれた」場所。悩み続け光が見えた5日間

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 昨季8勝を挙げて一躍ロッテの若きエース候補となった種市篤暉(たねいち・あつき)。そのブレイクのきっかけをつかんだ「コウノエ・スポーツアカデミー」の合宿トレーニングに、昨年に引き続き今年も参加した。

「たった2、3球投げただけで、僕の欠点を見抜かれました」

 1年前の衝撃を、種市は忘れない。キャッチボールの相手を務めたソフトバンクの千賀滉大から左肩の開きが早いことを指摘されたのだ。

鴻江寿治氏(写真左)が見守るなか、ピッチングを行なう種市篤暉鴻江寿治氏(写真左)が見守るなか、ピッチングを行なう種市篤暉 そもそも、種市が千賀への弟子入りを熱望して実現した合同練習だった。

 種市は青森の八戸工大一高からドラフト6位で入団。前評判は決して高いわけではなかったが、2年目の終盤に一軍で7試合に先発した。しかし、成績は0勝4敗。プロの高い壁を痛感させられた種市はすぐ動いた。

 チームの先輩である石川歩が千賀と交流があると知るや、頼み込んで連絡先を教えてもらったのだ。環境に恵まれているプロ野球選手には"やってもらう"ことが当たり前で育った者も少なくない。受け身の姿勢でチャンスを逃してきた若手をこれまで何人も見てきた。しかし、種市は違っていた。

 そしてこの合宿に来てわかったことは、千賀の投球フォームの基礎は同アカデミー代表でアスリートコンサルタントの鴻江寿治(こうのえ・ひさお)氏が築き上げたものだということだった。千賀はまだ育成選手だったプロ1年目のオフから鴻江氏に指導を仰ぎ、以来、1年のスタートをここで切っている。

 鴻江氏の提唱する骨幹理論の"うで体"と"あし体"の違いを知り、それに沿った体の使い方を学ぶ。種市は千賀と同じ"あし体"だった。それを知れば進む道はただひとつ。鴻江氏に教わりながら、千賀の投げ方を参考にしてフォームづくりを行なっていった。

 昨シーズンの種市は当初はリリーフ要員だったが、4月29日の楽天戦に先発してプロ初勝利をマークすると、以降は先発ローテーションに定着。26試合(17先発)に登板して8勝2敗、防御率3.24の成績を残した。

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