エリート選手への反乱? 前代未聞の「高校野球補欠会議」ってナンだ? (2ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【補欠は敗者ではない】

『補欠のミカタ 高校野球補欠会議2020』というイベントが、1月26日、東京・八王子の日本工学院八王子専門学校片桐研究所で行なわれる。1996年夏の甲子園で全国優勝を果たした松山商業(愛媛)の矢野勝嗣、山梨学院(山梨)の吉田洸二監督、帝京三(山梨)の稲元智監督らが登壇する。

1996年夏の甲子園でサヨナラ負けを防いだ、当時の松山商のライト・矢野勝嗣(左)1996年夏の甲子園でサヨナラ負けを防いだ、当時の松山商のライト・矢野勝嗣(左) 熊本工業(熊本)との決勝戦で"奇跡のバックホーム"を見せた矢野は、背番号9を付けてはいたものの、レギュラーと控えの当落線上にいた選手だった。帝京(東京)で補欠だったそうすけ(元360°モンキーズ)がMCを務めるこのイベントには、ひとりの「補欠出身」のプロ野球選手が登壇する。オリックス・バファローズでプレーした戸田亮だ。

 中学時代は控えの二塁手で用具係。強豪ではない大成高校(東京)でもレギュラーをつかめず、公式戦出場はわずか5試合。高千穂大学に進んでから投手に転向し、大学通算15勝を挙げて注目されるようになった。JR東日本を経て、2012年ドラフト6巡目指名を受けて入団、2018年シーズン限りでバファローズのユニフォームを脱いだ。

 彼が補欠時代にどのような思いで野球に取り組み、どんなプロセスを経てプロ野球選手になったのか? 知らざれる事実がこの日、明らかになるだろう。

【補欠の経験が何をもたらしたのか】

 勝つこともあれば負けることもあるのが野球であり、スポーツだ。努力は報われるとは限らない。どれだけ補欠の思いが強くても、勝利に結びつかないこともある。だが、それでも「補欠の力」が試合を動かすことがあると、筆者は思っている。

 仲間の思いを胸にグラウンドに立つ選手がいて、ベンチの外にいる人間が常に選手たちに厳しい視線を送る。両者の関係が深ければ深いほど、お互いの意見をぶつければぶつけるほど、チームは必ず強くなる。

 元オリックスの戸田のように、補欠時代に蓄積したパワーがそのあとの人生で爆発することもあるだろう。自分より優れた者を認め、自分の役割や立場を認識し日々全力で戦う姿勢は、どの組織でも求められるものだ。

『高校野球補欠会議』では、元球児、監督が一堂に会し、補欠というポジションの人たちの経験が、その後のチーム、人生にどんな影響を与えたのかについて話し合う。スポットライトが当たることのない「補欠の力」が再認識されるはずだ。

■補欠のミカタ~野球部補欠会議2020~
2020年1月26日(日)
開場 12:30 / 開演 13:30 / 16:00終了予定
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