2020.01.21

「バレンティンの穴」を埋めるか。
塩見泰隆は「二軍の帝王」脱却を狙う

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Koike Yoshihiro

 塩見は「修正する方法がわからなかった」と語っていたが、何もせずに過ごしてきたわけではない。

「僕なりにメンタルコントロールは考えてやってきました。二軍での打撃練習や試合で一軍の雰囲気を持ち込んでみたり、自分にプレッシャーをかけてみたりしました。そういう過程があって、今は何も考えないというか、最低限の仕事ができればいいやくらいの気持ちです。そのあたりは、オフに専門家の方の話も聞こうと思っています。この2年、やってきたことは間違いないと思うので、落ち着いてプレーができるように、あとは心ですね。僕は慌てん坊なんで(笑)」

 振り返れば、プロ初ヒットのあと走塁ミスを侵し、打順を忘れたこともあった。

「そうですね(笑)。二塁打で出塁したのですが、次の打者が内野ゴロを打って、普通であればサードへ走らなきゃいけなかったんですけど、初ヒットに舞い上がってしまって進塁できなかったんです。一軍の試合にそれなりに出るようになってからも舞い上がっています。試合前は『打てるかな......』とか考えて緊張しますし。

 そのなかで監督やコーチたちはやさしくしてくれるんです。普段は厳しいんですけど、試合になるとすごくやさしくて、『打てなくて当たり前だ』や『大丈夫だよ』とか言ってくれるんです。そこまで気を遣わせてしまったことが申し訳なくて......そのやさしさが逆に苦しかったこともありました」

 そう複雑な胸中を吐露した。

「後半戦は『どうせ打てないんだからバット3回振ってこい』みたいな感じで送り出してくれて、気持ちが楽になりました。僕と(廣岡)大志で1、2番の試合があったのですが、『お前らが打ったら万馬券だよ(笑)』って。この時は久しぶりに一軍で野球をしていて楽しかったというか、ネクスト(バッターズサークル)でも緊張しないで投手を観察できました」

 塩見は昨年9月19日の阪神戦でプロ初本塁打を記録。また、終盤の6試合では18打数8安打(1本塁打)と"兆し"を見せて、シーズンを終了した。

「コーチの方は二軍での映像も見てくれていて、『まだまだ(二軍での)姿を出し切っていない』と言われました。初ホームランは狙い球を絞らず、無我夢中でボールをとらえました。だから、あまり覚えていないんです。『打ちたい』ではなく、『来たボールを打とう』みたいな感じで、そういうシンプルな状態で打席に入ることが大切だなと思いました」