中日ドラ3岡野祐一郎投手の武器は「間」。長く立つで打者を惑わす (2ページ目)

  • 永田遼太郎●文 text by Nagata Ryotaro
  • photo by Nagata Ryotaro

 投球に入る前、通常は肩幅程度と言われているスタンスを、岡野は狭めて立っている。軸足である右股関節に体重を乗せる際、反動で軸がぶれることを嫌い、安定感を求めてしっかり立つことを意識したのだという。そのなかで立つ時間を自由に操り、相手打者のタイミングを外そうと考えた。岡野が続ける。

「長く立つようになって感じたのは、打者が打ちづらそうに、タイミングを取りづらそうにしていたことなんです。自分が立っている間に、打者のタイミングがずれているのがわかるようになりました」

 その一方で、投球を支えるストレートの質も向上した。重点的に取り組んだのはウエイトトレーニングである。上半身、下半身ともに新たなメニューを取り入れた。球速は常時140キロ台後半が出るようになり、球数が100球を超えた試合終盤でもボールの勢いが衰えることがなくなった。

 そしてもうひとつ、東芝の"2枚看板"として支えてきた宮川哲(西武ドラフト1位)の存在も大きい。150キロを超すストレートが武器の宮川だが、互いにない部分を遠慮なく話し合い、必要だと感じるものがあれば貪欲に吸収した。

 岡野の原点とも言える出来事がある。それは中学生時代の話だ。当時、岡野は石巻中央シニアの控え投手だった。しかも3~4番手で試合ではあまり起用されることのないレベルだ。

「その時、試合に出るのが当たり前じゃないって強く感じました。控え投手でいた時も、もちろん試合には出たかったですけど、実力がないから出られない。それが今は、大事な大会、大事な試合で起用されるようになっている。でも、それって当たり前じゃないなって思うんです。僕にとっては、中学時代のあの経験が生きている。大事な試合を任される真の責任感というのを感じる時があるんです」

 今年5月29日、都市対抗西関東二次予選代表決定リーグでのJX-ENEOS戦。ともに1敗しており、負けたほうが予選敗退という大一番の先発マウンドを託された。結果は9安打されながらも完投して2失点。チームを本大会出場に導いた。

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