ドラ1・大石達也を苦しめた重圧。「全然プロのレベルではなかった」 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • TOBI●撮影 photo by TOBI

 一生懸命練習しないといけない。いい球を投げないといけない──。

 初めての春季キャンプで大勢の報道陣に一挙手一投足を追いかけられるなか、ゴールデンルーキーは重圧に包まれていた。

 ブルペンで周囲を見渡せば、涌井秀章(現ロッテ)、岸孝之(現楽天)というプロ野球の頂点に君臨する投手が、その名声にふさわしい球を投げている。自分はふたりと比べて実力的に大きく劣っているにもかからず、最も注目されるのはなぜだろうか。

「そういう気持ちもありながら、1年目だからしょうがいないのかと思いながら......。今思えば、『なんで?』って思っていたのかな。当時はついていくのに必死だったので。周りの目を気にしていましたけど、そこまで深く考えていなかったですかね」

 大石が、大学時代からプロでも通用するストレートを投げていたのは確かだ。しかし、それだけで結果を残せるほどプロは甘くない。新たに足を踏み入れた世界には、大学球界と決定的に違うことがあった。

「普通にできると思っていたけど、今思えば、全然プロのレベルではなかったなと思いますね。大学は春と秋のシーズンだけで、シーズンと言っても土・日・月に1試合ずつ。それも5週間なので、今思えば『余裕でこなせるわ』という感じですね」

 対してプロ野球は3月末から10月頭まで、基本的に火曜から日曜に6連戦が繰り返されていく。短期的に見ればルーキーイヤーから活躍する選手も少なからずいるが、フルシーズン戦い抜くのは至難の業だ。少なくとも当時の大石は、プロで1年間戦える体力を備えていなかった。

 アマチュアからプロになり、そうした環境の変化はすべての新人選手にとってハードルになる。それにもかかわらず、華やかな経歴や高い能力を誇る者に使われる言葉がある。「即戦力」だ。近年は高校生にさえ使われている。

「けっこうな、かなりなプレッシャーではありますね」

 入団1年目に背負ったものを、大石はそう振り返っている。

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