2019.12.10

愛甲猛が明かす根本陸夫と星野仙一の
人心掌握術「選手を尊敬してた」

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Kyodo News

「星野さんは試合に勝つとミーティングで『今日はありがとう』って言うんです。僕は20年で8人の監督に仕えましたけど、星野さんだけです、選手に『ありがとう』って言った監督。大抵は”上から目線”で『今日、お前らよくやったな』です。それでも選手はうれしいですけど、『今日はありがとう。お前らのおかげで勝てた』と言われたら明日も頑張ろうって思えますから。

 まあ、星野さんの場合、負けた時とのギャップは激しいですけどね。負けたらみんなボロクソに言われるし、ぶん殴られるヤツはいるし、物壊すし(笑)。だけど、そのあたりの人心掌握術はすごかった。きっと、根本さんもそうだったと思うんですよ」

 実際、根本も選手に「ありがとう」と言う監督だった。逆転サヨナラで負けた試合後のミーティングでさえ、「今日は私のミスで負けた。すまなかった。集まってくれてありがとう。以上!」と、ひと言だけ発して解散となった。

「選手に対するリスペクトがある監督なら『ありがとう』って言えると思う。しかも、星野さんはそこで信頼関係を構築するのが本当にうまい方だから、この人に付いていこうって強く思う選手が何人もいたんですね。当然、根本さんもそうだったでしょうし、幅のオヤジもプリンスでそうでした。ただ、オヤジの場合、部下との信頼関係が最終的に社内の派閥問題につながってしまって、副社長になったあとにそれが嫌で、プリンスを辞めたんですよね」

 退職後、幅は韓国でホテル事業を展開した。ビジネスパーソンとして成功した背景には、情があり、義理を重んじる姿勢があった。これも根本、星野との共通項だと愛甲は言う。

「やっぱり、野球界でも情は必要で、義理も大事だと思うんです。たしかに、ビジネスとしてきちんとしたこともやらなきゃいけないですが、今は儲けることが先行してしまったり、何でもアメリカの真似をして変にドライになったり。僕はそうじゃないんじゃないかなって思うし、根本さん、星野さん、たぶんオヤジも、今ここにいて話していたら同じことを言うと思います」

つづく

(=敬称略)

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