2019.12.08

カープの剛腕はスゴかった。
「なんならもう1回」とノーヒッター3度

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 最強チームの打線相手ながら、時期的に投手有利な面はあった。が、最大の難関としてONの存在がある。

「私は、ピッチャーとバッターはお互いに騙(だま)し合いだと思っています。ところが王さん、長嶋さんはそうならない。打席に入るとこっちが引っ張り込まれるような、他の好打者にはないものが感じられて……。でも、私は自分から勝負を仕掛けて向かっていきました。結果、やられたらしょうがない。ときにはそういう割り切りも必要です。ただ、仮に記録を作る、といったら、巨人でいちばん難しいのは1、2番。そこが塁に出たら、得点力はよそのチーム以上でしたから、絶対に出さないことが大事」

 1、2番、もしくはイニングの先頭打者にヒットが出た時点で記録は消滅する。当たり前のことなのだが、外木場さんは何よりそれを大事にしてきたから3度も達成できたのではないか、と思う。

「実際、いちばん大事だと思うんですよ。まずイニングの先頭バッターを取っていく。その積み重ねが、最終的には記録にもつながっていくわけですから。今まで達成した人の考えはいろいろあるでしょうけど、私はそういう考えですね」

 図らずも、外木場さん独自のノーヒットノーランに対する考えが明かされた。それこそは運や偶然とは別の、スイッチが確実に入る瞬間に連なるかもしれない。ぜひ聞きたかったことが頭に浮上した。3度目ゆえに、ゲーム終盤になるにつれて、過去2度の経験を生かせるような部分はあったのだろうか。

「記録というものは……、過去の経験を生かしてどうのこうの、考えてできるものではないと思います。私は考えなかったですね。まず勝つことが大事であって。これ、ほかのピッチャーの考えは知りません。けれども、私は記録云々よりも勝負に勝つぞと。自分が出た試合は絶対、勝ったるぞ、という気持ちでマウンドに上がってましたので、結果、記録につながることはある、それだけだと思うんですよ」