カープの剛腕はスゴかった。「なんならもう1回」とノーヒッター3度 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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 いかに「これはいけそうだ」と確信しても、ゲームが終わるまではあらゆることを想定しておかなければいけない。あくまで完全試合も「ラッキー」ということだが、ゲームセットの瞬間はどんな心境だったのか。結果的に、「なんならもう一回」も実現したわけだが。

「そんなに派手に喜びは表現しなかったと思います。しかし拳を握って力を込めているはずですよ。ガッツポーズというヤツですか? それは完封したときも出たもんです。で、後から振り返れば『もう一回』がたまたま実現して、記者はもう何も言わなくなりましたよね。あっ、ヤツは本当にやったか、というように思った方もいるかもしれません」

 マスコミの見る目が変わった反面、チームメイトの見る目にあまり変化はなかった。自身の気持ちも変わりはなかったのだろうか。

「まだ野球は続くんですから、変化はないですよ。記録はたまたま結果でついてきたんだ、という考えをいつも持ってましたから。投げる以上は自分で決着つけたい。常にそういう気持ちでマウンドに上がっていって、結果が出れば記録的なものにつながるときもある、ということでしかないですよ。それは3度目だって同じです」

 72年4月29日、広島市民球場での巨人戦。過去2度と違うのはシーズン序盤で、王貞治、長嶋茂雄を中心とした強力打線が相手で、そして前年まで7連覇しているチームであること。難しい条件がそろったなか、果たして、スイッチが確実に入る瞬間はあったのか。

「4月ですから、バッターよりピッチャーのほうがまだ上かなと。夏場になるとバッターが調子を上げてくるものですが、春先はまだピッチャーのほうが状態はいい。そういうものがちょっと記録につながったかな、とは思ってます」

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