今宮健太が甲子園で見せた伝説の10球。「チビでもやれる」と証明した

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kouchi Shinji

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あの時もキミはすごかった~ソフトバンク・今宮健太編

 今宮健太(ソフトバンク)の高校時代は、打って通算62本塁打を放ち、投げて最速154キロをマークする超高校級の"二刀流"だった。

 そんな今宮を初めてみたのは、今から12年前の秋。明豊高校(大分)の1年にして「1番・ショート」で出場していた神宮大会だった。明徳義塾(高知)に敗れた試合後、今宮は悔しさたっぷりに強い口調でこう言った。

「絶対にまた明徳とやって勝ちたいです。同じ相手には負けたくないんです」

 間近で見る今宮は、スタンドで見ていたよりも小柄で、体つきも幼かった。それでも攻守に高い可能性を感じたプレーはもちろん、鼻っ柱の強さと野球好きオーラが全身から漂っていて、一瞬にして大ファンになった。

明豊時代に3度の甲子園に出場し、投打で活躍した今宮健太明豊時代に3度の甲子園に出場し、投打で活躍した今宮健太 それからは3度出場した甲子園はもちろん、大分や九州大会が開催されていた沖縄にも足を運び、今宮を追いかけた。

 2年春のセンバツ、常葉菊川(静岡)に初戦で敗れた試合のスコアカードには、今宮についてこんなメモ書きが残っている。

 まず、先発した投手・今宮について。「ハイテンポ」「上体が反り気味」「シュート回転」「秋のMAX138キロ」「相手なりに強弱の投球センス」。

 打者・今宮についてはこうだ。「ミート力高い」「外寄り、低め、拾うセンスあり」「振れる」「体幹が強い」「秋は打率5割超え」「次の塁を狙う意識高い」。

 この時点では、まだ好選手のひとりにすぎなかった。それが翌年になると、一躍ドラフト1位候補として注目されるほど、スケールアップしていった。とくに3年春から夏までに30本塁打以上を量産したバッティングの成長は著しく、全国屈指の強打者になった。

 そしてもうひとつ興味を持ったのが、花巻東(岩手)のエース・菊池雄星(現シアトル・マリナーズ)との対決だった。3年春のセンバツで初めて対戦し4打数1安打。1打席目は初球の真ん中高めのボールゾーンのストレートをライト前に弾き返した。しかし、残りの3打席は本気で抑えにきた菊池の前に見逃し三振、ファーストゴロ、セカンドゴロ。いずれも勝負球はインコースに厳しく食い込んでくるストレートで、1安打したものの、内容的には今宮が完敗だった。

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