2019.11.28

カープ伝説のエース・外木場義郎が
明かした「完全試合」達成の心境

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki


 その記録とは、2度目のノーヒッターとなる68年の完全試合。1度目とは違って、首脳陣からの指導と猛練習があって初めてできたこと、という実感がある。しかも同年、外木場さんは一気に21勝をマークし、23勝を挙げた安仁屋宗八(あにや そうはち)とともにエースの座にのし上がる。さらに、防御率1・94で自身初のタイトルも獲得。ならば、同年は相当に年間通して好調だったのかと思いきや、開幕3戦目の初登板で打たれて序盤で交替となっていた。

「そのときに根本さんから、『人間のやることだから、いつも100パーセントというわけじゃない。ただ、今日どうしてやられたのか、自分なりによう考えてごらん』と言われました。あの人はあんまり込み入ったことは言わないんですよね。選手が、よし次に頑張るぞ、ってやる気を起こさせるような話の持っていき方をされて、自分自身で考えさせる。考えれば、何かそこにヒントがあるだろうと。それで2戦目の大洋戦、完封できた。そこからですよ、私がローテーションに入ったのは。そういう意味では本当に、私がここまでなれたのは根本さんのおかげだろうな、と思ってますよ」

 根本監督の指導で「ここまでなれた」というなかに、完全試合も含まれている。9月14日、広島市民球場での大洋戦。

「あのときは前の日の夜から昼過ぎまで雨が降ってまして、これは中止だろう、と思ってたんですよ。それが『やる』となって、初めは気持ちが乗ってない。逆に、むしろそのほうがよかったんじゃないか、というのもありますね。あんまり気負い過ぎなかったことが。もちろん、後から考えてみれば、ということですけども」

 いざ試合が始まると、不思議と気持ちが乗っていった。自分では万全の態勢では行っていない、と思っているのに、イニングを投げるごとに体もうまく使えてきた。5回に近藤昭仁から三振を奪ってベンチに戻ると、捕手の田中尊(
たかし)が「お前の今日のボール、すっごいキレがいいで。ひょっとしたら完封するだろうな」と言った。