名コーチがプレミア12で分析。国際大会で打てる選手と打てない選手 (3ページ目)

  • 木村公一●文 text by Kimura Koichi
  • photo by Getty Images

 さて、今回のプレミア12で好結果を出した打者と苦しんだ打者との差を分けたものは何だったのだろうか。もちろん、調子の波というのは少なからずあるだろうが、一番はボールを捉えるポイントにあると思う。

 ボールを引きつけて打つタイプと、ポイントを前にして打つタイプに大別できるが、海外の投手と対戦した場合、引きつけて打つ打者ほど苦戦しているように思う。

 具体的に挙げれば、山田、丸、外崎(修汰)、甲斐(拓也)、小林(誠司)などは引きつけて打つタイプ。それに対して、鈴木、浅村、菊池、松田(宣浩)などは前で打つタイプである。坂本に関しては、本来は引きつけて打つタイプで、泳ぎながらも前で打てる技術を持っているが、コンディションの部分で整っていなかった印象だ。

 引きつけて打つタイプが多いのは、落ちる球が全盛のいま、それに対応するために指導されてきた結果だ。たしかに、引きつけて打つことでボールの見極めはできるし、ミート率は上がる。しかし、外国人投手特有の動くボールとなると、この打ち方では差し込まれたり、芯を外されたりする。だからメジャーの打者も、基本的には前でさばくバッターが多い。

 選手選考に関して、国内の試合で活躍している選手を入れるのは当然だろうが、こうした特徴も考慮して、選手を選ぶことも必要ではないだろうか。国内のリーグ戦では無双の活躍をしてきた選手が、国際大会になるとピタッと打てなくなることはよくある話だ。自分のスタイルを貫くことは大事だが、国際大会に向いている打者を発掘するのも、日本代表スタッフの大事な仕事である。

 それにしても稲葉監督はいい監督になった。決断力がついてきたというか、采配に迷いがなくなってきたように思える。それに松田(宣浩)あたりを呼ぶあたり、チームとは何かをわかっているのだろう。正直、いまの松田は力量的に代表クラスの選手だとは思えない。それでも彼は、試合に出なくても大声でチームを鼓舞し、ハチマキを巻いて盛り上げていた。ああいう選手というのは代えがきかない。とくに短期決戦になるほど、松田のような選手は必要なのだ。

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