2019.11.21

「野村克也の言葉」は生きるヒントの宝庫。
八重樫幸雄は懸命にメモした

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

「野村ノート」について語る八重樫氏 photo by Hasegawa Shoichi【野村克也が語った「プロ論」】

――まるで、学校の授業のような「野村ミーティング」ですけど、「プロ野球」は決して学校ではないし、職業であり、プロフェッショナルの集団ですよね。野村さんの考える「プロ論」とはどのようなものだったのですか?

八重樫 野村さんは「プロフェッショナル」について、「当たり前のことを当たり前のようにやるのがその道のプロ」と定義した上で、「プロとは限界を超えた世界」であると言っていた。僕がよく覚えているのは、「野球は職業である以上、スポーツという視点からではなく、人間観、社会観という広い視野からとらえなければならない」という言葉だね。

――まさに、その考えこそが「学校」ではなく、「プロ」としての考え方なんですね。だからこそ、「人間とは?」「人生とは?」というところから、野村ミーティングはスタートしたのかもしれないですね。とはいえ、なかなか結果が出ない時、うまくいかない時にはどんなメンタリティでいればいいのか。そのあたりの「野村の言葉」は何かありませんか?

八重樫 うーん、それは「限界論」かな? 野村さんは「限界」について、いくつかの例を挙げて説明しているんだけど、たとえば「限界を超えた世界がプロの世界」「本当のプロは限界から始まる」「限界を感じたときに貪欲さがあるかどうか。この貪欲さが真のプロ意識である」と言っているんだ。

――なるほど。真のプロ意識とは「限界を感じたときにも貪欲であること」なんですね。

八重樫 そう。「プロ意識を持てば、すべての物に貪欲になるはずだ」と言っているし、「限界に打ちのめされたことがない人間に可能性は見えない」「限界を知るから人間は超えようとする」とも言っているから。

――人生や仕事において、壁にぶつかって限界を感じた時に勇気が出てくる教えですね。でも、いざ限界を感じた時にはどうすればいいんですか? 「野村ノート」に、その答えは書いていないんですか?

八重樫 せっかちだなぁ(笑)。その辺りについても、ノムさんはきちんとヒントを用意してくれているよ。「限界を知るから己を知る。己を知るから正しい努力ができる」として、「限界にぶつかったら柔軟性を持て(発想の転換、切り替えの精神、視点の変化)」と具体的な方法を挙げているんだね。