門田博光、金田正一を偲ぶ「あの人が来て暗いパ・リーグに花が咲いた」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

「とにかく毎日の食事が真剣勝負で、『しっかり食べろ』『いいものを食べろ』と。体づくりの基本となる食事には、とにかくうるさかったと聞きました。金田さんは現役時代、遠征に食材を調達して、自分の部屋で鍋をしていたと聞いたことがあるように、徹底して食事にだわった人。だから監督になっても、まず食事改革から始めたんでしょう。しっかり食べて、しっかり寝て、しっかり鍛える。大事だとはわかっていても、そこまでやる人はいなかった時代。それを球団もしっかりバックアップしたんでしょうね」

 グラウンドでは、キャンプからとにかく走り、シーズンになると試合前にもかかわらず、選手たちが熱心にストレッチをやる姿が頭に残っていると、門田は言う。

「とにかくロッテの選手は柔軟体操をやっていました。これも金田さんの哲学なんでしょうけど、故障しない体づくりですよね。そうやなかったら400勝はできないだろうし、20年以上もプロの世界で戦えない。我々の頃もそうだったけど、当時は体について細かく教えてくれる人はいないから、みんな自分で会得した技術やトレーニング方法が理論になっていた。1台の自動車をひとりで組み立てていたようなもの。でも今は、トレーニングはこの人、バッティングはこの人と、いろんな人の手を借りて組み立てるから、調子を落としたり、故障したりした時に自分体がどうなっているのかわからない。金田さんの理論は、すべて自分がやって結果を出したなかで確立されていった理論なんです」

 続けて、金田氏の性格面の話題になった。

「現役時代も引退後も、自分のペースでとことんやる人に映っていると思うけど、名球会でハワイにいった時なんかは、みんなに気を遣って話しかけてくれてね。僕も初めてハワイ旅行に参加した時、『カド、どうやこの料理はいけるか?』って話かけてくれて、恐縮しましたよ。それから少しずつ話せるようになって、『オヤジ』と呼ばせてもらうようになったんですけど、僕のイメージは常にウェルカムの雰囲気をつくって、場を明るくする人でしたね」

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