八重樫幸雄が「野村ノート」を公開。ヤクルト黄金時代を築いた金言たち (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――みんな真面目にノートをとっているんですか?

八重樫 書かなかったのは(長嶋)一茂と、飯田(哲也)かな? でも、たいていの選手は真面目に書いていましたよ。ギャオス(内藤)なんかも、ああ見えて実は真面目で必死にメモを取っていたし、池山(隆寛)も、メモを取り切れないときには、ミーティング終了後にマネージャーに確認に行ったりしていましたからね。

――ミーティング当初は野球の話はほとんどしないで、人生論や精神論が多かったと聞きましたが......。

八重樫 そうだったね。でも、確かに野球には関係ない話のようではあるけど、それまでに聞いたことのない話ばかりだから、僕は面白かったですけどね。最初に聞いたのは「耳順」という、論語の言葉でした。他にも「働き一両、考え五両」という言葉も印象に残っていますね。

――「耳順」は、六十歳の異名で、「耳、したがう」で、「人の意見を素直に受け入れる」という意味ですよね。「働き一両、考え五両」とはどういう意味ですか?

八重樫 考えることの大切さを言った言葉ですね。野村さんによると、「考え方が取り組み方になり、訓練によって取り組み方が習慣を作り、習慣が性格を作っていく」ということなんだけど。ちなみに、「考え方の大敵はしゃべりすぎ、食べすぎ」だから、注意しなくちゃね(笑)。

――他に印象に残っている話はありますか?

八重樫 ちょっと、待ってね(とカバンからルーズリーフを取り出す)。

――おおっ! これは野村さんのミーティングの内容を八重樫さんが記した「野村ノート」の原本ですか?

八重樫 そう、ちょっと読んでみるね。たとえば「知識の入手法」として、「(1)困難な中から身につく、(2)生まれながらに身についている、(3)学んで身につく」とした上で、「自己啓発しながら仕事をしていくのが出世の早道」と書いてあるね。じゃあ、どうやって自己啓発したらいいと思う?

――本を読んだり、人に意見を求めたりですか?

八重樫 なかなか鋭いね。野村ノートには「(1)意欲を持つ、(2)読書、(3)人の話を聞く、(4)討論する、(5)よく観察する、(6)考える」とある。そして、生活の中では「聞く50%、話す30%、読む15%、書く5%」のバランスが理想的だということだね。

――ちょっと、面白すぎますよ、八重樫さん! まだまだ伺いたいことはたくさんあるので、ぜひ次回もこの続きからお伺いします。

八重樫 了解です。じゃあ、ひとまず(飲み物の)お代わり頼んでいいかな?

――どうぞ、とうぞ!

(第9回に続く)

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