恩師が語る村上宗隆のターニングポイント。「甲子園に出て変わった」 (3ページ目)

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Koike Yoshihiro

 高校時代の思い出を聞くと、1年の甲子園に行くまでは、ほかの選手とそう変わらないただの野球小僧だったが、1年生スラッガーとして注目を集めながらも甲子園で無安打に終わったことが、村上を変えたと坂井監督は言う。

「ああいう大舞台で打ってこそ、いい打者と言われるんです。そこを彼なりに受け止めたのではないでしょうか。あれでひと皮むけたのは間違いありません。それまでは三兄弟の次男坊気質が抜け切れていなかったけど、あのあとから物事をしっかり言えるようになってきたし、リーダーシップも出てきました。

 甲子園に出場する前から言っていたんです。『いつまでも次男坊で甘えていたらいかんで。野球をやっている以上は、チームのなかで長男にならんといかんで』と。上級生がいても関係ない。そもそも九州学院の野球部がそういう環境でやっているんです。あいつがプロの世界でも先輩にものが言えたり、ちょっかいを出したりしていると聞きますが、ウチの環境で育ってきたことも無縁ではないでしょうね」

 野球がうまくなることに関しては、高校時代から貪欲だったという。坂井監督の言葉を借りれば、「なんでもかんでも食いつかない。自分に合うものにしか食いつかなかった」そうだ。

「空気を読むのが上手なんですよ。場を読めるというのかな。ただ、いろいろと考えすぎるところもあって、それが打席でも迷いや力みにつながっている。だから、今は無理に大人になろうとせず、19歳のガキのままでいいと思うんですよ。でも、それが村上のいいところでもあるんですけどね」

 そして最後に坂井監督はこう言った。

「今はできないことでも、数年後には必ずクリアできる日が来るはず。いずれは100打点も達成するでしょうし、タイトルも手にすると思います」

 はたして来シーズン、村上はどんなプレーで我々を驚かせてくれるのか。日本球界を代表するスラッガーへ成長を続ける村上の今後を見守っていきたい。

3 / 3

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る