わずか3年で戦力外となった、元DeNA山本武白志が追うビッグマネー (4ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【クリケット選手としてビッグマネーを!】

 山本のクリケット転向が発表されたのは、2019年5月。ずっと「消息不明」だった彼の周辺がにわかにざわついた。

「ベイスターズをやめたあと、僕が何をしているのか、みんな、わからなかったと思う。友人も世間の人も。だから、ニュースになったときには、けっこう反響がありました。まさかクリケットを始めるとは思わなかったでしょう」

 実家のある横浜を離れ、現在は栃木県佐野市に住まいを移した。「佐野クリケットクラブ」に所属し、ラーメン店でアルバイトをしながら、練習を続けている。文字通り、ゼロからのスタートになった。

「クリケットは試合自体がすごく長くて、勝負がつくまで何日もかかることがあります。まだ十分にルールも理解できていません。僕は野球選手だったときのことを持ち込むつもりはなくて、クリケットの技術を少しでも早く身に着けたいと考えています。クリケットを始めた以上、野球選手時代のことをあれこれ言うつもりはありません。体重は10キロ、落としました。クリケットはかなり運動量があるので、それをイメージして体をつくっています。まだ何が正解なのかはわかりませんが、器具を使わず、自分の体重を使ったトレーニングを増やしています」

 21歳という若さがあっても、鍛え上げた肉体を持っていても、新しい世界に飛び込むのには勇気が必要だが、クリケットを始めることに対する不安はない。

「競技を始めてまだあまり時間が経っていませんが、いい感じで生活ができています。不安はありませんし、これからも感じないと思います。新しいことにチャレンジするというストレスもありません。自分でやりたくて、クリケットをやっていますから」

 本人は口に出さないが、プロでの3年間で悔しさや挫折を味わったことだろう。それまでが順調だっただけに、相当な絶望感があったはず。山本はこれから、苦しみや悲しみや絶望を力に変えることができるかどうか。

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