岡田彰布から鳥谷敬へエール。「チームを強くする無形の財産がある」 (2ページ目)

  • 服部健太郎●文 text by Hattori Kentaro
  • photo by Kyodo News

 バッティングのアドバイスをすることもあったけど、グラウンドでは極力やらないようにしていた。グラウンドで指導すると、すぐマスコミにバレてしまうし、周囲に「調子悪いんか?」って思われてしまうし。だから、アドバイスする時は絶対に室内練習場でやっていた。中からカギをかけて、誰も入れないようにしてな。

 右投げ左打ちの選手は、もともと右利きのケースが圧倒的に多いんやけど、鳥谷は(もともとは)左利き。だから、普通の右投げ左打ちの選手とはちょっと違うんよ。左手の方が強いから、引っ張りにいくと左手が被ってしまい、いい打球でもファウルになったり、ファーストゴロやセカンドゴロが多くなってしまう。

 でも、それは鳥谷の特性で、左中間方向にもいい打球がいくし、距離もしっかり出る。だから、引っ張るような打撃をする必要はないと言ってきた。ホームランを求めたらバッティングがおかしくなるタイプやと思ってたから、ホームランを打てとは言ったことはなかった。

 打撃面での鳥谷の大きな武器は、選球眼のよさ。現在までの通算四球数は、チーム歴代1位。四球はヒットと一緒やねんから、チームにとってはものすごくありがたい。出塁率が高いから、長打力のある4、5番の前に置きたくなる選手。2014年にマウロ・ゴメスが打点王を獲った時は、鳥谷が3番にいたから獲れたんよ。

 追い込まれるのが怖くないから、初球からポンポン打つこともしないし、じっくり球を見極めながら勝負できる。調子がいいと、つい積極的に打ちにいきたくなるんやけど、鳥谷はそれをしない。相手投手にしてみれば、じっくり見られるのは嫌だと思うよ。配球にも気をつかうし、リズムも生まれにくいから。スラッガーとは違った迫力があったと思うよ。

 ショートの守備は入団当初からプロの水準に達していたものの、入団2年目から5年目までの失策数は2ケタ。多い年は21個の失策を記録していた。でも、2009年に20本塁打を放ち、2010年に初めて3割をマークしたあたりから失策数がグッと減って、1ケタ台が当たり前になった。これは打撃で結果を残せるようになり、試合での心配事がなくなった。その好影響が守備の向上につながったと思う。やっぱり人間は、なにかしら不安があると得意なことにも影響が出てしまうものやからね。

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