楽天がCSで「割り切った攻撃」。平石イズム浸透で戦う集団になった (2ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Kyodo News

 そして、この対応が2戦目にも生きた。

 初戦で千賀の150キロ台後半のボールに選手の目が慣れていたことで、2戦目の先発で198センチと長身のリック・バンデンハークも積極的に攻められたのだ。

 この試合は、とにかく待った。とりわけ顕著だったのが、1番・島内宏明の我慢強さだ。

 初回の第1打席は、2ストライクからの3球目を転がし内野安打で出塁し、先取点のホームを踏んだ。第2打席、第3打席は四球を選んだのだが、ここまで島内はバンデンハークに14球投げさせ、初回の一度しかバットを振らなかったのだ。

 島内は「今日の相手のボールを見た時に待ったほうがいいのかな、と思っただけですよ」と、あっけらかんと答えるのみだったが、実際には「待つ」といった認識があった。

 小谷野コーチが作戦を補足する。

「全員じゃないですけど、個々で待つようにと対策はしていました。スピードに関しては、前日の千賀のボールを見て、選手が慣れているところもあったので、高めのボールを我慢できていましたね。とくに島内は、我慢強く待って球数を投げさせましたし、全体的に対応できたと思います」

 島内だけではなく、この試合でも3回に本塁打した浅村は、1打席目でバンデンハークに8球投げさせたことが、この一発につながったと言っており、4回の打席でも一時同点となるタイムリーを放った。試合は4-6で落としたものの、「好調」だった相手先発に4回途中までで99球を投げさせた。

 第3戦も、今シーズン2勝3敗ながら7試合で防御率4.20と得意とする高橋礼に対し、アンダースローから独特の軌道で浮き上がるボールを、ベルト付近のコースを中心に積極的に振った。4回、浅村のCSファーストステージ最多となる4本目のソロ本塁打で先制し主導権を握ったが、結局、この1点のみで1-2で敗れた。

 ソフトバンク投手陣、そのなかでも、リーグ屈指の力を誇る先発投手を苦しめた。だからこそ、チャンスで「あと1本」が出なかったところに悔いが残る。

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