楽天・藤田一也は攻守の切り札。
CS制覇へ「男前の監督を男にする」

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 今シーズンの藤田は、不動のレギュラーになれなかったし、故障も含め2度の二軍落ちを経験した。出場は楽天に移籍してから最少となる61試合に終わり、チームもリーグ優勝を果たせなかった。

 だが、平石監督を胴上げするチャンスは完全に潰えたわけではない。だからこそ藤田は、CSを勝ち抜き、日本シリーズに進むためにも「期待に応えたい」と力強く語るのだ。

 37歳、ベテランの本領が試されることになる。

 ゴールデングラブ賞3回の卓越した守備力。そして打撃でも存在感を発揮する。

 藤田が試合に出場する時はスタメンも多く、本人は「代打は不慣れ」と言う。だからこそ、1打席勝負は「何も考えず、来た球を打つだけ」と腹をくくる。

「スタメンだと絶対に緊張するけど、ベンチスタートだとそれがないというか、なかなかゲームに入っていけない。だから、自分の出番を想定して、あえてプレッシャーをかけまくるんです。『ストライクが来たらどんな球でも振れ』とか、『1球で仕留められなかったらアウトや』とか、それぐらいじゃないと、僕の場合はダメやと思うんです」

 このプレッシャーこそ、藤田が最高のパフォーマンスを発揮するうえでの原動力になっている。

 男前の監督を男にする大きなチャンス。指揮官の胸を打つほどの気概を見せる藤田は、チームにおける攻守の切り札だ。この"ジョーカー"がグラウンドに立った時の楽天は、間違いなく強い。

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