伊東勤は古田敦也を意識せず。「対野村監督の意識のほうが強かった」 (4ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――その第7戦ですが、スワローズ先発の岡林洋一投手も絶好調で1-1のまま、試合は7回裏に差しかかります。ワンアウト満塁の場面で打席に立ったのは、初戦で殊勲の代打サヨナラ満塁弾を放った杉浦選手でした。

伊東 場面はワンアウトでしたから、「できればゴロでゲッツーに」という思いはありましたけど、「犠牲フライでも仕方ない」ぐらいの気持ちでいたと思います。内野の守備は中間守備。バックホームも、セカンドでのダブルプレーも狙える陣形です。

――ここで杉浦さんの打球は、バットが折れた緩いセカンドゴロになりました。セカンドの辻発彦選手が半身で捕って、回転したまま伊東さん目がけてバックホーム。この場面を振り返っていただけますか?

伊東 緩い当たりだったので、ダブルプレーは難しいけど「ホームでひとつはアウトを捕れるだろう」と考えました。ただ、辻さんの捕球態勢が難しい態勢だったので、「まともなボールはこないかもしれない」と考えたと思います。

――実際に辻さんの送球は高めに浮き、伊東さんはジャンプを余儀なくされました。

伊東 確かにジャンプをして捕球していますけど、僕の中では、「ギリギリまで左足をホームベースにつけておこう」という思いはありました。後で写真を見てもらえればわかると思うけど、ジャンプしている時の僕の左足は、必死にベースに触れようとしています。満塁なのでタッチプレーではない。フォースプレーですから、「とにかくベースに触れてさえいればいい」。その思いで、必死に左足を伸ばしているんです。

(後編に続く)

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る