鬼コーチ・宮本慎也の心残り。「1人前にできなかった選手がいる」 (5ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

── 今シーズンの最下位という結果に、責任を取る形で退団という選択をされました。やり残したと感じていることはありますか。

「伝えたかったという部分では、心残りはあまりないですね。ただ、先程も話しましたが、西浦を一人前にしたかった。ゴロを捕って投げることや、打席での考えは成長しましたけど、ゲームを動かしていくことについては、まだまだなので......そこはやっぱり心残りです」

 宮本コーチは大きく伸びをして、「心残りというより、心配なことはたくさんあります」と寂しそうに笑った。しばらくの沈黙のあと、言葉を絞り出すように話し出した。

「来年はチームを離れて外から見ることになりますが、大丈夫かなぁと。厳しく指導してきて、僕に不満はたくさんあったでしょうけどついてきてくれた。僕も彼らに情が入りますし、こいつらが中心になってヤクルトが強いチームになってほしいと考えると......うーん、心配で仕方ないですね。そのひと言です」

 9月28日、神宮球場の室内練習場ではシーズン最後の"チーム早出"が行なわれ、宮本コーチと同じくチームを去ることが決まった石井琢朗打撃コーチの姿もあった。このふたりのコーチと若手選手たちとの練習風景は、この2年間変わることがなかった。いつだって選手たちのことを考え、彼らの成長を願い信じていた。その思いは、選手たちにしっかりと届いていたはずだ。

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