鬼コーチ・宮本慎也の心残り。「1人前にできなかった選手がいる」 (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

── 宮本コーチと村上選手がマンツーマンで話し込む姿を何度も見ました。

「村上はまだ19歳で、わからないことがたくさんあります。僕の言葉に反発もあったでしょうけど......口やかましく言った方が頭に残ってくれるんじゃないかと。いつかその意味が伝わってくれたらいいと、言い続けました」

── 若い選手を見ていると、2年間の練習の成果がようやく出始めてきたと感じていました。

「そうですね。最初、選手たちの打球の弱さにビックリしましたが、今は振る力もついてきました。この間、宮出(隆自/打撃コーチ)とも話をして、太田(賢吾)はまだチームに来て日が浅いので何とも言えないですけど、この2年間だったら山崎がいちばん伸びたというか、一軍でそれなりに必要な選手になってきているんじゃないかと。奥村も守備力が向上しましたよね。山崎にしても奥村にしても、吸収したいという気持ちが強く出ていた選手です」

── 心残りはありますか。

「西浦(直亨)ですね。僕がショートだったこともありますが、彼を一人前にしたかったですよね。昨年は相当怒りました。中村(悠平)にもかなりきつく言いました。そのなかで、僕らに対して『なにくそ』という強い気持ちで向かってきて、地道に力をつけてくれた。昨年秋のキャンプでは、『だいぶ変わった』と言いました。もうひと伸ばしすれば一人前になると思っていましたし、そうなってほしいという願いもありました。

 それが今年の春、『自分はまだ完全なレギュラーではない』と自分にプレッシャーをかけてしまい、よくない方向にいってしまった。そこにケガも重なって......。チームとしても、西浦が抜けて痛かった部分はありました。ショートというのは、どっしり育てたいポジションですので」

── 以前、宮本コーチの練習に対する考えをお聞きして、この2年間やってきたことの意味がわかりました。

「高校(PL学園)の時は、全体練習は3時間ぐらいで、あとは自主練習でした。最初は先輩の練習の手伝いなのですが、どんなことをやっているのかを観察しながら覚えていくんです。憧れだったKKコンビ(桑田真澄と清原和博)が在学中にどれだけ練習をしていたかという話を聞けば、それ以上にやらないとほかの選手との競争に勝てないし、レギュラーにはなれないと思っていました。

 僕は、高校、大学、社会人、そしてヤクルトと、いい環境でやらせてもらいました。練習を考えながらやっている先輩たちの背中を見ることができましたし、逆にやらない選手は落ちていくという姿も見ました。そういう意味で、練習の大事さは伝わったと感じています。ただ、ある程度は(選手の)性格に合わせた指導法というのは必要だったかなと思いました。完全に自分のやり方だけでやっても、今の時代はアプローチを変えないと難しいかなと......」

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