引退覚悟の筒香嘉智に大村巌が助言「自分の好きなようにやればいい」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • photo by Koike Yoshihiro

 バッティング自体の映像を見て、参考にする程度ならいい。厄介なのは、元プロをはじめ、いろいろな立場の人間が打撃理論を語っている映像である。理論に間違いはないとしても、言葉の使い方と伝え方、受け取り方の違いが迷いにつながる。まして、理論を語る映像はトレーニングの世界、医学の世界にも山ほどある。

「だから、それだけ情報が多いからこそ、シンプルに一本化して、思考の整理、やるべきことの整理をコーチが手伝う。そこがこの時代、大事だなっていうのは5~6年前から、僕はそういう考えになっていますね。ベイスターズにいる時から」

 2012年限りで日本ハムを退団した大村は、翌13年からDeNAの二軍打撃コーチに就任する。日本ハムと同様に長時間の研修があり、コーチング理論はもとより、チームビルディングからリーダーシップ論までも学んだ。そのなかで対選手のコーチングについては、「選手のタイプによってアプローチを変えたほうがいい」と具体例も出てきたが、さらに一歩、踏み込んだ接し方も示された。

 その接し方とは、選手がどう考え、何で迷っているかを知り、そのうえで整理してあげなければいけないというものだった。そうして迎えた秋、大村はまさに迷える選手に出会った。

 前年に自身初の2ケタ本塁打を放ってブレイクが期待されながら、8月に降格。わずか23試合の出場に終わり、奄美大島の秋季キャンプメンバーからも外れた筒香嘉智だった。

「当時の筒香は迷路に入っていました。僕はそれまで彼のプロセスを見ていなくて、言葉をかける機会もなかったんですが、横須賀に残留したので初めて聞くことができた。『1年目から全部教えてくれ』と言ったら、誰にどう教わった、夏にこうして、秋にこうして、オフはこうした、というのを克明に覚えているんです。それでプロ入りからの4年分、全部しゃべってくれました、1時間半ぐらいかけて」

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