八重樫幸雄に巨人レギュラーの可能性
「トレードの話があったみたい」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――たとえ活躍したとしても、褒められないんですね。

八重樫 確か、富山での試合だったと思うんだけど、試合前に広岡さんに「球場へ行く前に素振りをしておけ」と命じられたことがあったんですよ。それで広岡さんの部屋で素振りをして、その試合でホームラン2本打って、4安打ぐらい打って。さらにマスクをかぶって連敗を止めたんだけど、その時も褒められなかったぐらいだから(笑)。

――広岡さんがシーズン途中で監督になった1976年は5位だったものの、翌1977年は2位に。そして、ついに1978年はチーム創設初のセ・リーグ制覇、そして日本一に輝きます。1978年の開幕戦は八重樫さんがスタメンマスクをかぶっていますね。

八重樫 開幕を控えたオープン戦のラスト10試合くらいから、その年のレギュラーメンバー中心のスタメンオーダーになるでしょ? この年は大矢さんがずっとスタメンだったんで、「あぁ、今年は大矢さんでいくのか」って思っていたら、開幕戦当日のシートノック終了後、森さんに呼ばれて「今日はスタメンだ」って告げられて......。でも、開幕戦はデーゲームだったので、オープン戦の延長でスムーズに開幕を迎えられたんだよね。

――この開幕戦では安田猛さんとバッテリーを組んで、見事に勝利しました。幸先のいいスタートとなりましたね。

八重樫 確かにね。でも、4月28日の巨人戦での本塁クロスプレーで左の内側靱帯をやっちゃって、即入院。チームも調子よかったし、僕も打撃ランキング2位ぐらいだったのに......。だけど、しょうがないよね。ケガは野球につきものだし、ケガを恐れていてはプロとしてのプレーはできないから。
(第6回に続く)

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