元本塁打王ブランコの本音「落合さんクレバー。中畑さんコメディアン」 (4ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 次第にブランコは上機嫌になっていった。その姿を見て、はたして"成功"とはなんだろうと考えてしまった。

 教育があまり行き届いていないこの国にあって、野球は社会的にのし上がるひとつの手段である。ブランコ自身、地方の決して裕福ではない家庭の出身だった。その彼が、日本のプロ野球で活躍し、40歳を前にして巨万の富をつかみ、日々遊んで暮らしている。間違いなく"成功者"のひとりである。

 そしてこの国では彼のようにビッグマネーをつかむことを夢見て、アカデミーの若者たちは野球漬けの毎日を送っている。しかし、野球で成功を収められる者は、ほんのひと握りにすぎない。ブランコも日本に来ていなかったら、このような生活は送れなかったに違いない。

 ドミニカではアメリカ同様、成功を収めた野球選手は、基本、現場の仕事をしない。だから"成功者"は、現役時代に蓄えた富をひたすら消費する。はたして、今ブランコは何を生き甲斐にしているのだろうか。

 帰国後、案内人から写真が送られてきた。そこにはブランコとふたりの少年が映っていた。彼の息子たちだという。長男は今、メジャー球団との契約を目指して私設アカデミーに入っているという。ブランコの息子らしく、身長192センチという堂々たる体躯で、とても14歳には見えない。自分が叶えられなかったメジャーでの成功を息子に託す----ブランコは今、それを生き甲斐にしているのだろう。

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