元本塁打王ブランコの本音「落合さん
クレバー。中畑さんコメディアン」

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Asa Satoshi

 その日の夜、ひとりの男に会った。彼の名はトニ・ブランコ。中日、DeNA、オリックスの3球団で通算8年間プレーし、2009年には本塁打王を獲得した右の長距離砲だ。すでに現役を退いていることは、そのふっくらした表情を見ればわかる。

 現役引退後はバーを経営していたがすでに閉め、今はカリブ海のビーチでジェットスキー三昧の日々を送っているという。

「まあ乗りな」と我々を車に乗せると、サントドミンゴへ向かうハイウェイに入っていった。

 車中でいろいろと話していると、自身の将来についても語ってくれた。ブランコは少年たちに野球を教えるビジネスを考えているようだった。この国の野球少年たちの夢はメジャーリーガーになること。彼らはメジャー球団との契約解禁となる16歳まで、元プロ野球選手が運営する私設アカデミーで野球に明け暮れる。

 ちなみに、私設アカデミーのトライアウトに受かれば、一切費用はかからない。アカデミーの運営者は、彼らに思う存分プレーしてもらいたいと、衣食住すべての面倒をみる。やがて、ここからメジャー球団と契約する選手が現れたら、契約金の一部が"育成料"としてアカデミーに入るというシステムだ。

 このビジネスを始めるには莫大な資金が必要だ。なにしろ、最初の契約選手が現れるまで、すべて持ち出しである。

 車は繁華街に入り、高級レストランの前で停まった。きらびやかな街並みは、ここがドミニカであることを忘れさせる。ブランコは出迎えたボーイにキーを渡すと、我々をレストランに招き、テラス席のソファーに座った。

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