ヤクルトに移籍した辻発彦が戸惑い。
「こんなチームに負けたのか?」

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

【「あの2年間は、まさに死闘だった」】

――あらためて、1992年と1993年の激闘について、どんな感想をお持ちですか?

 シリーズが始まる前は、「知将対決」とか、「キツネとタヌキの化かし合い」などと注目されていたけど、実際は監督どうこうじゃなくて、選手たちによる死闘ですよ。「死闘」という表現がピッタリの戦いだったと思います。

――辻さんは現役時代に何度も日本シリーズに出場していますが、「死闘」というのは、この2年間だけですか?

 僕は西武で9回、ヤクルトで1回、全部で10回、日本シリーズに出場していますけど、それぞれ印象は違いますね。阪神を相手に初めてシリーズに出場した1985(昭和60)年はまだ2年目だったので無我夢中だったし、1986年の広島とのシリーズでは1分け3連敗からの4連勝という劇的なものだったし、思い出はいろいろあります。

 ヤクルトと戦った1992年、1993年のシリーズに関しては、似た者同士の両チームが全力でぶつかったシリーズでした。似た者同士だからこそ、一歩間違うと、まったく逆の結果になる。その繰り返しでしたから。

――だからこそ、「死闘」と言える日本シリーズなんですね。

 とくに1992年は延長戦が4回もあったし、最後の最後までどうなるかわからないシリーズでした。この時は西武が日本一になったけど、今から思えば「本当に疲れた」、そんな日本シリーズでしたね(笑)。今でも、こうして注目していただけるのは嬉しいですよ。

(飯田哲也の証言につづく)

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