2019.09.09

あぶさんのモデル・永淵洋三は、
元祖二刀流から大酒飲みの首位打者に

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

 チーム内で理解されていないなか、5月の終わりに転機が来た。23日の南海戦、永淵さんは初めて6番・センターで先発出場。26日の東映戦では6番・ライトで先発出場したあと、7回に四番手で登板。さらに28日の東京(現・ロッテ)戦では7番・ピッチャーで初先発したが、2回、先頭の山崎裕之に本塁打を浴び、なお1安打2四球で降板となった。

「今でも憶えてます。三原さんがベンチから僕のほうに手招きした。『もう投げんでいいぞ』って。それでピッチャーは6月の頭に投げたので終わり。『バッターに専念しろ』って言われたときには内心、ホッとしましたよ」

 2ヵ月で終わった「一人三役」。投手としての成績は12試合で0勝1敗、19回1/3を投げて9奪三振、5四球、自責点6で防御率2.84。そもそも三原には〈将来は脚力と打力を生かして外野手に〉という構想があり、永淵さん自身、キャンプで鈴木啓示のボールを見たときからレベルの違いを痛感、ピッチャーでは通用しないと思っていた。

「だから、僕はすぐあきらめられた……。そういう意味では、大谷はピッチングもバッティングもどっちもいいものを持ってるから、どっちかに決められないんだと思いますよ。監督が悩むのもわかります。でも、本当はもうね、どっちかに絞ったほうがいいんです。あの世界、両方はできません。無理です」

 ごく自然に大谷の話につながった。永淵さんは経験者として、どちらがいいと見ているのだろう。

「将来のことを考えれば、バッターのほうがいいでしょうね。長生きできるから。よく、野球界のいろんな人に話を聞いたら、『まずピッチャーでいって、ダメだったらバッターに転向すればいい』って言う。そりゃあ、言いますよ。みんなそう言います」