あぶさんのモデル・永淵洋三は、元祖二刀流から大酒飲みの首位打者に

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki

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「令和に語る、昭和プロ野球の仕事人」 第4回 永淵洋三・後編 (前編から読む>>)

 平成の世にあっても、どこかセピア色に映っていた「昭和」。まして元号が令和になったいま、昭和は遠い過去になろうとしている。だが、その時代のプロ野球には独特な存在感を放つ選手たちがいて、ファンを楽しませていた。

 過去の貴重なインタビュー素材を発掘し、個性あふれる「昭和プロ野球人」の真髄に迫るシリーズ。漫画『あぶさん』のモデルとして知られる永淵洋三さんは、近鉄を指揮する名将・三原脩監督から「二刀流」を命じられた。迎えた1968年4月16日の東映(現・日本ハム)戦、遅咲きのルーキーは二刀流どころか「一人三役」をこなして球界をアッと驚かせる......。

1968年、「二刀流」時代の永淵さんを捉えた貴重なショット(写真=時事通信)1968年、「二刀流」時代の永淵さんを捉えた貴重なショット(写真=時事通信)

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 まず、近鉄が2点ビハインドで迎えた2回裏。先頭で代打に出た永淵さんは初球、内角高めの真っすぐを叩くと、打球は右翼席中段に飛び込んでプロ初本塁打。この一打で猛牛打線に火が点き、一挙6点を取って逆転すると直後の3回表、永淵さんは四番手でマウンドに上がり、2回2/3を2安打1失点。降板後はライトの守備に就き、2打席に立ったのだ。

 試合は結局、近鉄がサヨナラで勝ったが、一人の新人が代打、救援、外野守備で勝利に貢献したことに注目が集まった。周りから「すごいことやりよるな」という声が聞かれるようになり、スポーツ紙は〈投げて 打って 守って 近鉄の"変わり種ルーキー"永淵〉と題する特集を組んだ。

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