山田哲人の失敗ゼロの盗塁術。今永昇太は「まるで幽霊」とお手上げ (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 さらに今永は、これまでの一塁走者に山田を迎えての局面についてこう話す。

「けん制やウエストのサインも出ますし、真っすぐのサインも多くなるなど、警戒レベルは最高に達しています。そのなかで、僕は最短のクイックで投げ、キャッチャーも捕球してからベストの送球をする。『これは間一髪アウトかな』とこれまでの経験でわかるものなんですが、振り返ってみると、もうセカンドに滑り込んでいて、悠々セーフなんですよ。バッテリーで最善を尽くしたのに、あれだけ余裕でセーフということは......トップスピードに乗るのも速いですし、スタートも抜群だと思いますし、僕にクセがあるのかもしれないですけど、どうすればいいんだっていう感じです(笑)」

 そしてこうも続けた。

「山田選手に対しては、まず出塁させないことが大前提です。でも、塁に出してしまった時は、もちろん盗塁は防ぎたいですけど、もう二塁にいるものと仮定して投げます。相手にそこまで最悪のことを想定させてしまうのが、山田選手です」

 山田は29日の試合で、プロ野球史上初となる4度目の「シーズン30本塁打、30盗塁」を達成した。

「まだシーズン途中ですが、30本、30盗塁というのはシーズン前から目標としていたので素直にうれしいです」

 試合後の囲み取材で、山田はそう答えた。口調はいつもと変わらず、穏やかでやさしい。その姿を見ていると、2014年に聞いた山田の言葉を思い出すのだった。

「将来は相手に嫌がられる選手になりたいです」

 あれから5年、山田は十分すぎるほど相手に嫌がられる選手になった。

 そして8月30日の試合で山田は今季32個目の盗塁を決め、シーズン連続盗塁成功のプロ野球記録を更新。史上初の成功率100%の盗塁王も現実味を帯びてきた。

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