7番降格、何かが起きてる山川穂高。本塁打&打点トップも不調が続く (4ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

「今年ずっと4番を打っているなか、打てない時期が長かったときもあるし、しんどいだろうなと思いながら見ていました。いろいろやって、だいぶいい感じになっていたときもあるんですけどね。でも、まだ苦しんでいるし、やってきたことが試合で出たり、なかなか出なかったりという感じはあるので。まあ、僕が言うことでもないんですけど」

 昨季序盤、中村は極度の不振に苦しみ、二軍落ちを味わった。そこで打撃の形を見直し、見事復活を遂げている。

 36歳のバースデイアーチを放った8月15日、家族が待つ家にクルマを出発させる直前、中村は山川に向けてこう言った。

「頭で思ったとおりにバットが出ていないことがあると思う。そういうのはゲームで感覚を掴んでいくと、またいい形になってくる」

 今季は残り約30試合。果たしてシーズンが終わる前に、山川は迷い込んだトンネルから抜け出すことができるか。

「野球を楽しめている? いや、無理っす。無理、無理。守っていても緊張するし、打席に立っても打てないときのほうが圧倒的に多い。野球をやっていて楽しいのはホームランを打った瞬間と、ダイヤモンドを回って、今年だったら『どすこい!』をやっているときのみです。

 ホント、何十秒の時間だけが楽しいし、うれしい。それ以外は苦痛です。まあ、その何十秒がうれしいからがんばれるわけで。ホームランがうれしくなかったら、練習しないです」

 そう言った山川は、ようやく笑みを見せた。

 迷い込んだトンネルがどれくらいの長さなのかは、抜けてみるまでわからない。たしかなのは、いつか、暗闇に包まれた道には終わりが来るということだ。それは、シーズン終了という日程によるゴールなのか、あるいは自分の力で光を見つけ出すのか。

 誰よりホームランと向き合う男が歩む、苦しい道――。ひとつだけ言えるのは、真っ暗なトンネルの先に、明日のホームランにつながる糧があるのは間違いない。

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