打てる捕手にこだわる阪神・梅野隆太郎。原点回帰+狙い球で打棒復活 (4ページ目)

  • 服部健太郎●文 text by Hattori kentaro
  • photo by Kyodo News

 プロでもまれた年数分、配球を予測する力は1年目の比ではないほどに高まっていた。狙った球が高確率で投じられることも打撃成績の向上を後押しした。追い込まれる前に仕留められる打席が増えたことは三振率の大幅な改善にもつながった。

「打撃の面で遠回りしたとは思っていません。いろんな経験ができたからこそ今がある。僕は一番の近道だったと思っています」

 自身の打撃ヒストリーをいったん結んだあと、「今は新たに現れた壁と戦っています」と語った。

「今季はインコース攻めが明らかに増えました。ここまでインコースをガンガン投げられるのは初めての経験です」

 過去5シーズンの通算死球数は8個だが、今シーズンは現時点(7月29日現在)ですでに5個。6月以降、打率は下降線を描きながら夏場を迎えた。

「状態がいい時はインコースを攻められても少し甘ければ打ち返せたんですけど、体の疲れなどで状態が悪くなると、そうもいかなくなる。インコースを過剰に警戒することで体が開いてしまうとアウトコースの球も打ち損じてしまう。打撃がステップアップしたからこそぶち当たった壁ともいえますが、必ず克服し、バッターとしてのレベルをさらに上げて行きたいと思っています」

 数字が向上しているのは打撃面だけではない。入団後3年間、2割台が続いた盗塁阻止率は、2017年以降、常に3割台をキープし、今季もリーグ2位の.346729日現在)をマーク。しかし梅野自身は「盗塁阻止率にはあまり強いこだわりはない」と語る。

「どんな状況でも自分ができることは全力でトライしますけど、盗塁阻止は投手との共同作業ですし、刺せない時はどんなに速く、いいボールを投げても刺せない。走者一、三塁の場面で一塁走者がスタートを切った際に送球できなくても盗塁はカウントされてしまう。率というよりは、『ここで絶対刺してほしい!』とファンが願う、ここぞという場面できちっと刺せるキャッチャーになりたい。そのことに対するこだわりは強いです。まだまだですけどね」

 また、"梅ちゃんウォール"と呼ばれる、巧みなストッピングは今季も健在。ワンバウンドを止める技術はリーグ随一といっていい。

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