秋山翔吾「書かれると困る」を解禁。打率を急上昇させた打撃理論 (2ページ目)

  • 中島大輔●取材・文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Jiji Photo

 ボールに対して最短距離でバットを振りにいくのではなく、やや遠回りしてでも、ボールに力を加えなければヒットにできないと感じていた。秋山の言葉を借りると、スイングで「バットのヘッドを利かせる」ために、コンタクトする時、「グッと止めている感じ」だった。

 だが、それでは打率が上がらず、アプローチを変えた。右ひじやグリップエンドを抜くようなイメージでボールに最短距離で振りにいき、フォロースルーを大きくとるようにしたのだ。

 そうして打率が上がった理由について、秋山はこんなたとえ話をしている。

「右手を大きく振ってパンと叩いたほうが、そのままの位置から叩くより(叩かれた人は)痛いですよね。でも、叩かれるとわかった人は、普通、避けますよね? ボールも同じことで、振りかぶるとコンタクトの確率が低くなる」

 時々、「野球は物理学」と言われる。実際、動いているボールを打つ際、バットでボールに力を加えるためのイメージが、秋山には明確に計算されている。

「力が出るのは、絶対後ろから振っているほうです。でも、動いているボールを捕まえないといけない。100%の出力で、50%しか力の出ない位置でバットに当ててしまうより、80%の力で80%の力が出る位置で当てたほうが、掛け算的にはいいという話ですね。ボールをこすったり、詰まったりするのは、40%や30%しか力の出ない位置で打っているからです。力が伝わっていないわけですね」

 3番だから打てず、1番に戻ったら打てた――。それだけで片付けると、野球の面白さが大きく損なわれる。

 3番と1番の違いは、走者の有無で回ってくる打席数の差だ。一般的に1、2番に出塁率の高い打者を置くことが多く、下位打線はその確率が低くなるため、1番より3番はチャンスで回ってきやすい。そうした打順の巡り合わせと、秋山自身のアプローチの違いがあったからこそ、3番では打てず、1番に戻ったら打てたのだ。

 月間打率4割をマークした5月、得点圏打率が低かった理由を秋山はこう話している。

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