平井正史コーチが説く能力アップ術「選手を過保護にしてはいけない」 (2ページ目)

  • 高橋安幸●文 text by Takahashi Yasuyuki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「ちょうどひじが疲れてきた頃に先発ローテーションに回してもらったんで、それがよかったですね」と振り返る平井だが、この転向に加え、故障から復調した経験は、投手を指導する上で貴重な財産になっている。

「いい経験と悪い経験、僕には両方あるんですけどね。ただ、やはり、手術して自分のひじのことはよく考えるようになりましたし、逆に『ここまではできる』っていう、自分でも線引きができたんです。それができてからは、ケガをすることがすべてマイナスかというと、そうでもないのかなと。

 そういう意味では今、選手に対して過保護にしないよう心がけています。でないと、本当はまだいけるのに、半分ぐらいで『ちょっともうやめましょうか』って、選手が自分から終わりにしてしまう。すると、その後のケアも疎かになっていくという傾向もあるんです。だから、ケガをした時ほどチャンスと思って、しっかり走り込んで『もう1回、下半身からつくり直してこい』と言いたいですよね」

 ケガを未然に防ぐためのブレーキは、監督・コーチにもかけられる。しかし、ここまではできる、という線引きには選手自身で気づくことが求められる。線引きはリミッターのようなもので、リミッターを外すところまでいって初めて成長がある、ということか。

「結局、プロの世界はケガを怖がっていたら、それ以上はできないということです。そのリミッターがあるとするならば、リミッターの基準値を自分でどうやって高めていくか。そこでギリギリのところまでいかないと、自分の限界はなかなか超えられないですから。とくに、フォームを自分のものにするためには、球数を投げなきゃわからない。根気強く、自分のフォームを追求していくとなれば、限界まで球数を投げるだろうし、そういう選手が一軍で結果を残せると思うので......」

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