地味でも光り輝く献身力。いざとなったらヤクルトには荒木貴裕がいる (3ページ目)

  • 島村誠也●文 text by Shimamura Seiya
  • photo by Kyodo News

 チーム練習を見ていても、荒木は前面に出るタイプではないが、チームメイトからの信頼の厚さを感じる。青木宣親は「荒木は、オレが(ヤクルトに)戻ってきてから、最も成長していた選手だと思う」と言った。

「それはいろいろな面でね。ユーティリティとして、守ることもそうだし、打撃でも状況判断ができるし、勝負強くて長打もある。レギュラーとしてはやっていないけど、すべて高いレベルでプレーできる。チームに必ずいてほしい選手ですよね。本当にいい選手になったなと思います」

 宮出隆自(りゅうじ)打撃コーチは、「今年は試合序盤や中盤で"切り札的"な役割というところでやってもらっていますけど、野球に対して抜くことをせず、積み重ねてきた経験値がここまでの成績に結びついていると思います」と言い、こう続けた。

「打席に入るまでの心構えや投手との間合いの取り方など、うまさというか、落ち着きが出てきていると感じますね。荒木の野球に対する姿勢や練習への取り組み方を、若い選手はお手本にしてほしいとすごく思っています」

 ルーキーの中山翔太は6月9日に一軍初昇格。その試合で、ベンチでの荒木の姿に感銘を受けたと話す。

「初回からどんなことが起きても対応できるように、ベンチやベンチ裏で体を動かしていましたし、まだ出番はないなという時は、声を出している。打席ではチームのことを考えたバッティングをしていて、ランナーがどこにいるのか、イニング、点差を考えて右打ちしたり、外野フライでいい場面ではしっかりと打てる。僕自身、いろいろ吸収できればと思っています」

 最後に、残り試合で目指すこと、そして先発出場についての考えを聞くと、こう答えてくれた。

「今はどんな形でも試合に出たいですね。もちろん、先発で出たい気持ちはありますが、自分のことだけをやればいいという年齢じゃないですし、チームのことをいろいろ理解してやらなければと思っています。試合数にしても、バッティングにしても、数字を目標にするのは難しいですね。代打で3割を打ったとしても、ランナーがいる場面で1本も打てなかったら意味がないですし、僕としてはランナーがいる場面で1本でも多くのヒットを打つことが大事かなと思っています」

 交流戦が終わり、再びリーグ戦が始まった。荒木の「ベンチの期待に応えてくれるプレーの数々」は、最下位に沈むヤクルトに勇気を与えてくれるはずだ。

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