非情采配は期待の裏返し。眠れる獅子・野間峻祥は吠えて試練に打ち勝つ (3ページ目)

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 西田泰輔●写真 photo by Nishida Taisuke

 厳しさだけではない。首脳陣は1番起用が増えた5月、野間に課題を与えた。

「カウントを整えられるようになろう」

 野間の持ち味でもある積極打法は1番としてはもろ刃の剣。打てば打線に勢いをつけられるも、早打ちで凡打に終われば相手投手を乗せることになる。初球からストライクを積極的に打ちにいくのではなく、相手バッテリーと駆け引きしながら好球必打を心掛ける。東出、迎祐一郎両打撃コーチから指南を受けながら、1番打者としての心得を学んでいる。時代が平成から令和へと変わった5月、野間も変化を求められた。

 月間打率は4月の2割7分4厘から2割6分9厘に落としながらも、4月の4四球から5月は倍以上の10四球を選び、出塁率は3割1分1厘から3割3分6厘に上げた。

また1打席で相手投手に投げさせる球数も増えた。4月は74打席で269球、1打席平均3.6球だったのが、5月は118打席で532球。1打席平均4.5球と1打席で約1球多く投げさせていることになる。試行錯誤しながらも、何とか目に見える成果を上げてきた。

 とはいえ、まだ粗削り。1番打者としても、いちプロ野球選手としても、完成型ではない。6月は打率だけでなく、出塁率も数字が伸びない。このまま調子が上向かなければ打順変更だけでなく、再びスタメンから外される可能性すらある。だが、試練に直面したときの咆哮が、新たな姿に進化する号砲。未完の大器ゆえのもろさこそ、野間の最大の魅力かもしれない。

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