全米ドラ1男がソフトバンクへ。MLBとの仁義なき契約戦争が始まる (2ページ目)

  • 阿佐智●文 text by Asa Satoshi
  • photo by Kyodo News

 しかしながら、スチュワートならびにボラスの最終目標がメジャーであることに変わりはないだろう。成功した際の最終的な報酬を考えれば、いかに資金力豊富なソフトバンクであってもメジャーにはかなわない。

 周知のとおり、選手層の厚いアメリカではいくら有望株であっても、いきなりメジャーデビューというのはまずない。そもそも彼らには、最初はマイナー契約しか用意されていない。

 アメリカの大学の卒業時期は6月。すでにメジャーのシーズンは中盤にさしかかっている。キャンプを経験していない彼らを使わなければならないほど、メジャーは人材に困っていない。ドラフトで指名された1000人を超える選手たちは、その技量に応じて、ある者はキャンプ施設で体づくりをし、ある者は国外のアカデミーに送られ、そして大多数は全米各地で開催されているマイナーリーグでプレーする。

 そのため、デビューするルーキーのためのリーグは6月に開幕。トッププロスペクトと呼ばれる上位指名組のほとんどは、ショートシーズンAにランキングされる リーグに配属される。

 その点、日本ではドラフト上位選手、あるいは大学・社会人出身者は"即戦力"として、いきなり一軍の戦力として期待される。つまり、一定以上の技量がある者ならば、NPBの方が早い段階でトップの舞台を経験できる。

 NPBの一軍がメジャー同等とは言うつもりはないが、少なくとも3Aは凌駕するレベルであることに異論はないだろう。いい素材は高いレベルを経験することで才能を伸ばすことができる。そう考えれば、スチュワートもアメリカで数シーズンをマイナーで過ごすより、NPBでプレーすることを選択したとしても納得がいく。

 じつは、このようなことは今に始まったことではない。ソフトバンクにはこれまでも代理人を通じて売り込みがあったと聞くし、20年ほど前にも、短期間ではあるがオリックスにドラフト候補の大学生が練習生として参加したことがある。その時の報道では、アメリカのマイナーでプレーするより、日本のコーチングを受けた方が技術の進歩につながる、という選手サイドの目論見が報じられていた。結局、この時は正式な契約にいたらなかったが、日本で指導を受けたいというアメリカのドラフト候補は以前からもいた。

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