オープンスタンス、落合、メガネ...八重樫幸雄が令和に遺すプロ野球伝説 (3ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi
  • photo by Sankei Visual

一晩でダルマ2本を呑み干す超酒豪

――「八重樫幸雄・黄金伝説」はまだまだ続きます。「④・天才落合博満に打撃の極意を伝授!」とのこと。失礼ですが、現役通算773安打の八重樫さんが、現役通算2371安打の落合さんに打撃の極意を伝授したというのは、ちょっと信じがたいのですが......。

八重樫 うーん、それは言い過ぎかな(笑)。メガネをかけてプレーするようになってから、打撃フォームも変えたんです。というのも、どうしてもメガネのフレームのふちの部分がボールと重なったり、投球がフレームから外れてしまったときに、球が見えづらくなっちゃって。それで、自分なりに試行錯誤した結果が、あのオープンスタンスだったんです。

――当時の僕は、八重樫さんのことを「ミスターオープンスタンス」とひそかに呼んでいました(笑)。

八重樫 試行錯誤の結果、左足を大きく開いて、ピッチャーと正対する構えにたどり着いたんだよね。「独特なフォームだ」ってみんなに言われたけど、結果的にそれが打撃向上につながったんだよ。「神主打法」で活躍した落合も、何か参考にはしたかもしれないけど。

――直接、落合さんに指導したり、打撃理論を語り合ったりはしたんですか?

八重樫 全然、してない。現役引退後、彼が評論家でヤクルトの視察に来たときに打撃理論について話したことはあるけど、神主打法については聞かなかったな。聞けばよかったね(笑)。

――さらに「八重樫幸雄・黄金伝説⑤・メジャーリーガー岩村明憲、青木宣親を育てた男」とも言われています。これは二軍監督時代のお話ですか?

八重樫 現役引退後、野村(克也)監督、若松(勉)監督の下で打撃コーチをやったり、二軍監督を務めたりしたけど、岩村や青木にはつきっきりで指導をしたよ。オレは現役時代に三原(脩)さん、廣岡(達朗)さん、野村さんなど、歴代の名監督の指導を受けていて、ヤクルトでコーチだった中西太さんの教えを受けていたのも後にとても役に立った。そうした教えを岩村や青木に伝えたんだ。

――歴代の名将たちとの交流、そして指導者としての実績については、次回以降、おいおい伺っていきます。続いて、「八重樫幸雄・黄金伝説⑥・一晩でダルマ2本を呑み干す超酒豪」とのこと。お酒は大好きなんですか?

八重樫 最近はだいぶ弱くなったけど、若い頃は淡々と呑み続けていたよ。「ダルマ」と呼ばれていたサントリーオールドなら、一晩で2本は空にしていたから(笑)。それでも、酩酊もしないし、二日酔いにもなったことがなかったから、周りが「昨日は呑み過ぎた」とか、「今日は二日酔いだよ」という意味がよくわかっていなかった。初めて二日酔いになったのは還暦を過ぎてから。このとき初めて、「あぁ、これが二日酔いなんだな」って、ようやく理解できるようになったんだね(笑)。

――今回は第1回ということで、八重樫さんの自己紹介を兼ねて、「八重樫幸雄黄金伝説」を伺いました。次回からは、「歴代名将について」「過去の名投手について」「八重樫流打撃理論」など、テーマを決めてお話を伺っていきます。次回はお酒を呑みながらインタビューをしましょうか?

八重樫 いいね。酒が入ったら、言っちゃいけないことも言うかもしれないけど、ぜひ次回は酒場で会いましょう。また次回もよろしく!

(第2回につづく)

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