オリックスが「世界のナカガキ」獲得。MLB選手もその運動学に心酔 (2ページ目)

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Sportiva

"ナカガキ"獲得は、じつはこのオフのバファローズ、最大の目玉だったという声はあちこちから聞いた。現在、二軍の施設がある舞洲(まいしま)に拠点を置き、バファローズの選手たちに接して4カ月を経た中垣さんは、どんな立ち位置にいるのだろう。

「今回、2年ぶりに日本に戻ってきましたけど、ファイターズもパドレスもバファローズも、チームがどこであろうと、日本だろうとアメリカだろうと、野球選手に対して僕ができるアプローチは同じだなということをあらためて感じています。野球選手が持っている体力的な性質や、野球のトレーニングや技術演習のなかで抜け落ちやすいことは、どこへ行っても変わらないんですよ」

 中垣さんが言う「抜け落ちやすいこと」とは、たとえばこうだ。

「みんな、脚を使えって、子どものときから言われてますよね。でも、それって具体的にどう使えば脚が使えていることになるのかを説明できる選手はほとんどいないんです。だからまずは、脚を使っている感覚とはこういうものだ、ということを実感させてあげます。脚を使うとどうなるのかを、その場で体験させてあげるんです」

 となれば、選手ではないが、ぜひ体験させてほしいとお願いしたくなる。中垣さんは「いいですよ、じゃあ、立って下さい」と言って、こちらを立たせてから、そのすぐ真横に立った。

「今から押しますから、動かないように僕に抵抗して耐えて下さいね」

 そう言って、真横から中垣さんに腰のあたりを軽く押されたら、耐えることなどできるはずもなく、ポーンと、いともあっさり動かされてしまった。中垣さんが続ける。

「野球というのは横方向に進む動きが多いスポーツです。ピッチャーだったら横向きに体重移動しますし、バッターも軸足から踏み込む足のほうへ、つまり横に向かうわけです。じつは、狙った横方向へ正確にまっすぐ動く作業って、ものすごく難しいんですよ。でも野球を子どもの頃からやってきている選手たちにしてみれば、打つのも投げるのもあまりに自然な動作なので、横に動いているという意識さえない場合が多い。だから、横方向へまっすぐ動いているつもりになってしまうんですね」

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