2019.04.17

野村克也の教えに「うわ、すげぇ」。
土橋勝征はID野球を素直に吸収した

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

「ID野球とは、野球を簡単にしてくれるもの」

――土橋さんはしばしば、「ID野球の申し子」とか、「野村ヤクルトの優等生」と言われました。どうして、こう呼ばれるようになったのか、ご自分ではどう思いますか?

土橋 今、自分がコーチになって思うんですけど、今の選手は真面目な子が多いんです。でも、僕らの頃はまだ「オレが、オレが」みたいな性格の人が多かった時代でした。だから、野村(克也)さんが「こうやれ!」って締めつけても、そのとおりに動かない選手もいたんです。でも、僕は千葉の田舎の公立高校の出身で、そんなに野球のことを知っているわけでもないから、野村さんの話を聞いて、「あぁ、こんなことがあるんだ」とか、「すげぇな」って思うことばかりだったんです。

現在はヤクルトの一軍内野守備走塁コーチを務める土橋氏 photo by Hasegawa Shoichi――野村さんの言葉が素直に耳に入ってきたんですね。

土橋 そうです。野村さんの言葉を聞いて、「わかりました。やってみます」と素直に言えたので、そういう言われ方をするようになったんじゃないですかね。

――野村さんの著書の中には、自身に反発した選手の実名を挙げているものもありました。

土橋 自分に自信があって、プライドを持っていた選手も何人かいました。でも僕の場合は、そもそも外野をやったことないのに外野手になって、野球のことなんて何も知らなかったですから。監督が「こうなるんだよ」と言ったことに「本当かよ?」と思っていたら、本当にそうなるんです。そうなると、「うわ、すげぇ」って興味が湧いてきますよね。「ちょっと信用してみようか」とか、「ちょっとやってみようか」って。「バットを短く持て」と言われたら、「ハイ、持ちます」と(笑)。まさに"崇拝"という感じでしょうか。 

――漠然とした質問になりますが、土橋さんが考える「ID野球」とは?

土橋 確率の野球なのかな? 野村さんがよく言っていたのが「なくて七癖」でした。人間がやっていることなので、絶対に何か傾向がある。それをきちんと考えること。野村野球について、よく「頭を使う野球」と言いますけど、頭を使うことで野球は簡単になるんですよ。行き当たりばったりで、どんなボールが来るのかわからないで打つのと、「ある程度こういう傾向がある。じゃあ、そのボールを狙おう」というのとでは、後者のほうがずっと野球がやさしくなる。そういう感覚ですかね。