すべては楽天のために。平石洋介新監督「僕の評価はどうだっていい」 (4ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 この試合、プロ4年目にして初勝利を挙げた石橋が、しみじみと語る。

「チャンスをいただいている以上は絶対にビビっちゃダメだ、と。監督からも『ビビったら使わんからな!』と言っていただけていることも大きいですし。だから、どんな場面で投げても一喜一憂しないというか、逃げるようなピッチングだけはしたくないんです」

 あえて石橋とリンクさせるのなら、平石自身、現役時代は実績を残したわけではない。7年間で37安打。本人をして「実績ほぼゼロ」と自嘲するほどである。

 ましてや、いくらコーチとしての経験が豊富だったとしても、監督としての実績は現時点でゼロに等しい。「僕の評価はどうだっていい」と平石は言ったが、深層を探れば、やはり指導者としての矜持は、当然ある。

「最近は考えないですけど、指導者になりたての頃は実績をものすごく気にしていたんですよ。若くて、実績がないわけですから、まるっきりダメだったらボロクソに叩かれます。そういう世界にいるってこともわかっているんです。だからこそ、『見返したい』って意地はありますけどね」

 平石は自身を選手たちに投影しているわけではない。ただ、試合では実績を度外視して起用はする。選手を信頼する以上、監督であっても選手の身になって戦う。コミュニケーションひとつとっても、言うべきことがあれば腹の探り合いをせずにはっきりと伝える。だから、選手に響く。平石は言う。

「人と人が接することなんでね、教科書なんて存在しませんよね。仮にあったとしても、相手の心に響くかといったら響かないじゃないですか。だからといって、指導者側の一方通行でもダメですしね。普段から選手といっぱい話すことで、時には厳しいことも言えると思うんです。いかに選手はやる気になってくれるか。やっぱり、なんとかいいものを引き出してあげたいですからね。自分がどこまでできるかわからないですけど、そこは大事にしていきたいですね」

 これは、平石の信念でもある。

 自分を見てくれている――。

 全力で向き合い、進むべき道を示してくれた指導者が、平石にもいた。監督となった今も、その土台が揺らぐことはない。

つづく

(=敬称略)

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