すべては楽天のために。平石洋介新監督「僕の評価はどうだっていい」 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

「たらたらアップするんじゃなくて、声を出して全力で走ったり、動ける準備をしないといけないんでね。シートノックだって、試合前に選手同士の息を合わせられるのってそこしかないじゃないですか。だからね、そこは口うるさく言っています」

 平石が掲げる強いチームにすること。その地盤を築くために選手たちに求めているのは緊張感と集中力の持続だ。

 新監督はそれを、「競争」という言葉でチームに浸透させている。生え抜きの選手、指導者として二軍から一軍まで楽天を見続けてきた平石が言うそれは、「結果を出したものがレギュラー」といった杓子定規な狙いではない。昨年までの主力は「胡坐(あぐら)をかくな」と尻を叩き、二軍でくすぶっている選手たちには「這い上がってこい」と鼓舞する。

 平石は開幕カードで意志を貫いた。

 開幕戦の6回。2点リードながら二死一、二塁のピンチでマウンドに送ったのは、昨年途中に育成から支配下選手となった石橋良太だった。オープン戦で好投したといっても、一軍での登板は通算で6試合と経験は少ない。ましてや、開幕戦の勝敗を左右する窮地で、ブルペンでは経験豊富な青山浩二や福山博之が控えている。それでも平石は、「いいシュートがあり、変化球で左右に揺さぶられる。信頼していたから出した」と石橋に託したが、ブランドン・レアードにそのシュートをレフトスタンドまで運ばれた。

 楽天はこの一発で星を落とした。「采配が裏目に出た」。人によってはそう批判するかもしれないが、重要なのは、平石が言う「信頼している」という言葉は、この場面に限ったことではないということだ。

 開幕戦後、敗戦投手となった石橋は「1時間、思いっきり反省した」と述懐している。そして、監督からの「切り替えたか?」のひと言で完全に立ち直った。

 石橋は31日の開幕第3戦でリベンジの舞台を与えられた。同点の3回、一死二塁。一打勝ち越しのピンチを切り抜け、2点を勝ち越した5回の一死一塁の場面では、開幕戦で一発を浴びたレアードをシュートで打ち取り、無失点で切り抜けた。

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