育成時代から千賀滉大を最も知る男が語る
「161キロのメカニズム」

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 鴻江氏はさまざまな施術やトレーニングのノウハウから"骨幹理論"を提唱。人間の体は"うで体(猫背型)"と"あし体(反り腰型)"にかれており、それぞれに合った体の使い方をすることで、その人が本来持つパフォーマンスを最大限発揮することができ、故障の予防も期待できるという。

「今のプロ野球界は"あし体"の選手が非常に多くなっているように思います。ひと昔前は"うで体"が大半でしたが、トレーニング法やマウンド、アンツーカーの部分が硬くなっていることなどが原因で、"あし体"の選手が増えたと考えられます。

 合宿やシーズン中のケアなどでたくさんのプロ野球選手と接することが多いのですが、そのなかでも千賀投手は"あし体"の最も理想的な投げ方をしていると思います。たとえば、走者がいない場面でもセットポジションから投げるのは、あし体の人は下半身から始動してタイミングを取る方がスムーズに体が動くからなんです。右足のかかとで『ポン』とリズムをつくってから左足を上げるのはそのためです」

 鴻江氏は"あし体"の投手(※右投手の場合)について、以下のような体の使い方を推奨している。

・左足を上げる際、つま先は地面の方に向けておく

・イメージの中で捕手(ミット)へ一本のラインを描く。その上を体、ボールが通っていく。起点は左腰

・軸足の右膝の内側にポイントを作っておく。捕手方向へ押し込む準備をしておく

・母子球から着地。かかとで体を回す

・踏み出す左足はインステップしても大丈夫

・腰は横回転となる

・グラブを持つ左手の甲を捕手に向ける

・最初に余計な力を入れず、ゼロから100のイメージ

・左足が地面に着いた時点から下半身に力を込め始める

・右腕は自ら振りにいくのではなく勝手に振れる

・指先は水を切るように、走らせるイメージ

・胸を張って、胸の前に壁を作る

・ストレートの握りは、通常よりも少し左側にずらして、中指がボールの中心にくるように握る(一見シュートのようだが、実際はシュートせずにボールにはタテの回転が生まれる。中指は指の中で一番長く、そのため最大限に指先の力をボールに伝えることができるのだ。これによって、千賀は球界トップレベルの回転数を記録するようになった)

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