岡林洋一VS打者・石井丈裕。勝負を決めたのは石毛宏典の声だった (2ページ目)

  • 長谷川晶一●取材・文 text by Hasegawa Shoichi

――「デストラーデの抑え方」とは、具体的にはどんな策なのですか?

岡林 デストラーデの第2打席、最後はインハイのストレートで三振を奪ったんです。事前のミーティングでは「高めはダメだ、高めはダメだ」と言われていたけど、「いや、意外と高めは使えるぞ」と手応えを感じました。結局、初戦ではインサイドをほとんど使えなかったんです。でも、インサイドの高めに力のあるストレートを投げれば抑えられると感じました。それまでは、何をどうしたらいいのかわからない状態で投げていたけど、フィニッシュが見えたことで、エサをまきながら、そこに持ち込む方法が見えたんです。

――結局、この試合も岡林さんは完投したものの、先ほどの秋山選手のソロホームランによる得点だけで、0-1と惜敗。チームは1勝3敗と追い込まれてしまいました。

岡林 そうですね。チームは追い込まれてしまいましたね。でも、ピッチングとしてはほぼ完璧だったので自信にはなりました。......ただ、この試合の途中に、「アレ? 来年は投げられないかもしれないな」って感じたんです。調子はよかったし、肩も痛くなかったんだけど、「なんかしっくりこないな」というボールが何球かありました。そのときに、急に来年のことが不安になったんです......。

――翌年はシーズン途中で故障し、その後も長くリハビリに励むこととなりました。

岡林 この試合で、余裕があったというわけではないけど、「アレ、何かおかしいな」って考えながら投げていたんですよね。同じように投げているのに、いいボールとそうじゃないボールと、すごく差があるんです。自分でも理由はわかりません。そのときに、ふと来年のことが不安になりました。今から思えば、肩の疲労が回復しきっていなかったんでしょうね。投げながら、「大丈夫かな、来年」って思っていましたね......。

シリーズ3度目の先発で、3度目の完投も......

――1勝3敗と追い詰められたものの、スワローズは第5、6戦を連勝し、3勝3敗のタイとしました。雌雄が決する第7戦、またしても先発は岡林さんでした。

岡林 第5戦にもベンチには入っていました。さすがにその試合は投げることはなかったと思うけど、第6戦は展開次第では投げることになったと思います。結局、第5、6戦での出番はなかったんですが、チームが3勝3敗のタイに持ち込んで、第7戦で投げることになりました。

――第7戦は「中3日」での登板となりました。以前、この連載において、この第7戦に中4日で登板した西武・石井丈裕さんが、「自分は中4日でも、まるで時差ボケのような感覚だった。中3日で登板した岡林くんはもっとキツかったはずだ」と言っていました。

岡林 もう、ふくらはぎはパンパンで走ることもできないんで、当日は何もしないで球場に入りました。いや、ふくらはぎだけじゃないです。足、腰、腕、全部がパンパンの状態ですよ。満足な(ウォーミング)アップができなかったので、チョロチョロって動いた程度で試合に臨みましたね。でも、泣いても笑ってもこれが最後ですからね。たぶん、この状態であっても、「今日は投げられません」っていうピッチャーは誰もいないと思いますよ。

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