巨人を戦力外=限界ではない。中井大介がDeNAで得た新感覚 (3ページ目)

  • 石塚隆●文 text by Ishizuka Takashi
  • photo by Kyodo News

 失わなければ、得られないものがある。中井は紆余曲折を経たことによって新たな価値観を見出した。文化の違う球団には、心地よい風が流れていた。

「ベイスターズに来て驚いたのは、いい意味で自由というか、自主性を重んじる練習が多かったこと。自分で考えて取り組む時間を大切にしているんだなって」

 中井もまた、自分と向き合い、何をすべきなのか徹底的に考えた。それは少しずつではあるが形になり表れようとしている。ラミレス監督とは巨人時代3年間ほど一緒に過ごし、打撃のアドバイスなどをもらっていたという。キャンプからオープン戦を通し、自分に求められていることについて話し合い、チームに貢献するにはどうすればいいのか中井はしっかりと理解している。

 3月20日の広島戦、試合前の円陣で中井は、キャプテンの筒香嘉智に促され初めて声出し役をした。それをチームメイトは笑顔で受け止めた。

「いきなりだから驚いたし、差し込まれましたね(笑)。咄嗟のことで『昨日はいいゲームができたので、今日もいいゲームして勝ちましょう』って普通のことしか言えませんでした。まあ、少しずつチームに溶け込めているのかなって実感しています。いろいろと貴重な体験をさせてもらっていますし、しっかりと結果で返せるようにしたい」

 野球を楽しむ──シーズン後「中井を獲ってよかったな」と思える日が来ることを願ってやまない。

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