イチローも認める男・中日アルモンテ。
成功の秘訣はヒゲの長さにあり

  • ブラッド・レフトン●文 text by Brad Lefton
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 最後まであきらめずに応援してくれるファンがいる国には、最後まであきらめない選手がよく似合う。

「日本に来ていちばん驚いたのは、ファンの人たちが1回から9回までずっと応援してくれることです。本当に1回から休むことなく、応援し続けてくれることにびっくりしました。感動したし、感謝しています。とてもいい気分でプレーできます。だから、どんなに点差が開いていようが、ファンのために最後まで頑張りたいと思います」

 そう語るのは、中日に入団して2年目、今年29歳になるドミニカ共和国出身のソイロ・アルモンテだ。

昨シーズン、来日1年目ながらリーグ5位の打率を残した中日・アルモンテ昨シーズン、来日1年目ながらリーグ5位の打率を残した中日・アルモンテ 16歳だった2005年にニューヨーク・ヤンキースとマイナー契約を交わし、2013年のシーズン途中に初めてメジャーに昇格した。そして6月21日に初ホームランを放つなど、バッティングで目立っていた。

 だが、当時、ヤンキースのチームメイトだったイチロー(現シアトル・マリナーズ)の目を引いたのは、9月26日の試合前のある光景だった。

 その前日、ヤンキースは痛い負けを喫し、プレーオフ争いから脱落。ほとんどの選手は、もうシーズンオフのような気持ちになっていた。試合前の全体練習をキャンセルし、クラブハウスではダンボールにモノを詰め、それをテープで巻き、荷造りする選手で溢れかえっていた。

 しかし、イチローは違った。たとえプレーオフ進出が断たれたとはいえ、試合への臨み方はいつもとまったく変わらない。そんななか、イチローのほかにもうひとり、ロッカーの片づけよりも練習に励む選手がいたのだ。

 それがアルモンテだった。イチローから聞いたそのことを伝えると、アルモンテからこんな答えが返ってきた。

「その日のことは覚えていません。でも、たしかにそんな状況でも練習していたと思います。だって、野球が大好きですし、選手として野球ができる期間は限られていますからね。たとえば弁護士だったら、歳を重ねても仕事はできますけど、選手が野球を仕事にできるのは10年とか15年ぐらいでしょ。だからこそ、1日1日を大事にしたいのです。いつ最後になるかわからないので一生懸命やらないと。みんなが荷物の片づけをしていたとしても、僕は試合がある限り、練習を優先させると思います」

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